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中川信男の多事争論

「多事争論」とは……福沢諭吉の言葉。 多数に飲み込まれない少数意見の存在が、 自由に生きるための唯一の道であることを示す

プレマ株式会社 代表取締役
ジェラティエーレ

中川信男 (なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。

【Vol.69】だからこそ、宮古島に向かう

投稿日:

農業生産と加工、観光の融合を柱とする「プレマ株式会社の宮古島プロジェクト」も気がつけば始動から2年以上が経過しました。全く縁もゆかりもない宮古島の土地に降り立った私を歓迎してくれたのは、この世のものとは思えない柔らかい雨でした。この土地は世界的に力強いパワースポットとして知られていますが、そのことを肌で感じたのが、この竜宮城に迷い込んだかのような、素敵な雨の洗礼でした。ゼロから決めて始めたことですが、この件は必ずうまくいくという直感がありました。母なる雨は私にそれを教えてくれているようだったと改めて思い出しています。

だからこそ、大きな夢
具体的には、私ができる限りで地元の皆さんとの関係を構築しつつ、メルマガ上でこのプロジェクトに人生をかけてくれるスタッフを募集しました。私と同年代の男性が関東からしっかりとスーツをきて京都のオフィスにやってきました。聞けば材料工学の専門家であり、自動車の金属接合に関する研究開発を仕事にしているといいます。「まだ売上ゼロですから、給料はとっても安いですよ。」「農業ですから、休みらしい休みはありませんよ。残業代も出ませんよ。」「全く違う環境で、お酒も一杯飲まないといけませんよ。」とネガティブな話だけをしました。それでも構いませんという約束をしてくれたのが、現在の株式会社オルタナティブファーム宮古の松本克也社長です。「どこのよそ者が来たのかな、どうせ内地(本土)のやつは口ばっかりだろう」くらいの下馬評から、めきめきと関係作りに勤しみ、同時に農業生産もスタートして、少ない量ですが無肥料自然栽培のお野菜などを提供開始できるところまでこぎ着けました。さらに、環境情報学を専攻して環境コンサルタントして働き、理論ばかりの世界に嫌気がさして現場に飛び込んできたのが久喜伸晃くんです。男性2名に松本社長の家族まで合流して、さらにパワーアップした布陣に至りました。実際の現場は地道な農作業の連続であり、そのうえ慣れない販売のコンテンツ書きや地元の方との交渉なども次々やってくるわけですが、それぞれに「離島(宮古島)を別天地にして、環境をさらによくすると同時に、新しい離島経済を切り開く」という壮大な夢があります。松本社長には赴任前に福島にも私と一緒に出向いてもらい、厳しい現実と同時に、それでもなおの精神で立ち上がる無農薬農家さんの姿を感じてもらいました。私の中には、助成金で人々の心を惑わし、経済の自立を阻害しつつ、都会のやっかいものを押しつけてきた結果が、福島で起きた災禍として明らかになっているのです。「沖縄の離島における諸問題と、福島を初めとする原発立地地域のかかえる問題の根っこは同じ」という私の口癖が生まれました。

さらに次に
農産物が出荷出来る体制が整ったことで、弊社東京支社に所属する二人のスタッフにも宮古島に出向いてもらいました。彼らの日報を引用して、宮古島の問題と同時にある、大きな可能性を感じてください。

【岸真規子(プレマ株式会社プロモーター)の日報より】
実は、宮古島に行くまで、「宮古島(沖縄)が抱えている問題は、原発の問題と根っこは同じ」ということについて、知識的理解でしかありませんでした。しかしながら今回、少なくともその現状を実際に垣間見た気がしています。

美しく透き通る海、サンゴ礁や魚たち、あちらこちらに生えているハーブ、数多くの美しい花々やヒラヒラと舞う蝶たち、神聖なる“うたき”、空には満天の星、蛍…宮古島の大自然の素晴らしさと神聖さに心を奪われました。
一方で、辺り一面のサトウキビ・葉たばこ畑の不自然さ。痛々しい島の開発。海ではカニや魚がいなくなったり、生態系を脅かすオニヒトデが繁殖したりしているそうです。外来種の植物も生態系の破壊により増えたと言います。

昔の宮古島は、島固有の多様性があり、森も多く、島で育てていた野菜はもっと種類が多かったそうです。人々の心は「結」という精神を、厳しい自然や統治下のもとで築きあげ、助け合って生きていたそうです。そこには、Give&Giveのこころ(見返りを求めない純粋なこころ)があったようです。それが補助金事業により、森のコンクリートで固めてしまい、生態系島のこころや誇り、アイデンティティまでをも失いかけているようです。
また、生活に直結する水の汚染問題は、自分も一母親として深刻だと感じました。宮古島はに川や湖などがなく、飲料水は地下水に依存する世界的にも例を見ない島です。にもかかわらず、1980年代以降、化学肥料が急速に普及したことで、省力化や生産性の向上の代償として、化学肥料由来の硝酸態窒素が地下水を汚染するという深刻な問題を抱えることになってしまっそうです。

すべての根っこにあるのは、過剰な公共投資、補助金漬けによる思考停止の状態に陥った々の意識にあると感じます。原発の問題とまさに根っこが同じだということが、【あまりにも美しい自然や非常に神聖なる場所多き宮古島の姿、側面】と【あまりにも痛々しく、憤りを感じる補助金漬けの現状、側面】の両方を見て、聞いて、味わって、香って、触れて、そして祈ることを通して感じました。
では、この問題をどう解決していけばいいのか、という具体的なアクションとして、『宮古島プロジェクト』は大変意義のあるものだと感じます。誰かが小さくとも始めていかなければ、この由々しき現状は打破できないと思います。

本プロジェクトについては「プレマ株式会社の宮古島プロジェクト」でネット検索して、概要やブログ、商品などを通じて、日々の奮闘を感じていただければ嬉しいです。

- 中川信男の多事争論 - 2013年6月発刊 Vol.69

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