客観的に見る
気候が涼しくなってくると、夕暮れ時に「よう打たんのんかい!」「どこ見とんのじゃ!」といった声が聞こえてくるようになります。赤ちょうちんの居酒屋やラーメン屋の前を通りかかったときに、特に多いです。プロ野球のテレビ中継で阪神タイガーズ戦を見ておられるのでしょうね。球団関係者でもないだろうに、大声で「やめてまえ!」なんてものも。それでもご自身は阪神ファンをやめないのが面白いところです。
画面に映るのは、幼少期から野球を一生懸命にがんばってきて、プロになれた選手たち。日の高いうちからビールを傾けるオジサンたちにわかることが、プロの選手にわからないわけがありません。だけど、わかっていても平凡なミスをしてしまう。素人にわかることがわからなかったりする。それは、試合という“内側”にいるからで、その試合を観ている“外側”にいるのとは違うからです。プロが外側から客観的に見れば、見誤ることもミスをすることもないでしょう。実際にプロの選手は、その日の試合を録画で見直し反省材料にすることもあるようです。
八風吹不動
禅の言葉の中に「八風吹けども動ぜず、天辺の月」とあります。八つの風とは、四方八方から吹いてくる風というより、人生における追い風と向かい風のようなものを指します。
追い風としては、利[り](自分の利益を心)、誉[ほまれ](名誉、誉められたいと願う心)、称(称賛されたいと願う心)、楽[たのしみ](享楽、楽したいと願う心)の四つ。これらを「四順」といって、こういう風が吹いてくれればと願うことがあります。
向かい風には、衰[おとろえ](気力、活力の衰え)、毀[けなし](他の人から批判され、けなされる姿)、譏[そしり](他の人から、そしられる姿)、苦[くるしみ](人生の苦難、苦境にさらされる姿)の四つがあります。これらを「四違[しい]」といって、こういう向かい風は吹かないでほしいと願う心をいいます。
「八風吹不動」とは、こうした八つの風に迷い惑わされることなく、毅然とした確固たる心でありなさいとの教えのことです。私たちの世に、どんな風が吹こうが、天上の月はいつも輝いている。だからこそ、どんなことにも揺らがない真実の心を持ち続けましょうということになります。
人からの評価というのも実にさまざまですし、時として変わるもの。誉められたからといって調子に乗ったり、けなされたからといって、その度に気に病んでしまうようでは、人に左右される人生となってしまいます。評価にとらわれるよりも、自分に素直に生きる“真心”を持ちたいものです。
ちがいを知る
他人と比べて、自分はなにもできない。そう思ってしまうことがあります。能力的にできないのか、物理的な障害があってできないのか、何らかの事情があってあえてしないのか、ただ怠けてしないだけなのか。「できない」を分けてみれば、少し客観的に見えるようになります。さらにいえば、それをできないとしても、他に自分にできることはないのかを探してみるのもいいかもしれません。
人と自分は同じではありません。時には人と違うことをしてみるのもいいでしょう。難しければ、まずはいつもと違うことをしてみる。いつもとは違う駅で降りて歩いてみる。通り慣れた道ではないところを通ってみる。道に迷ってしまうこともあるでしょうが、その先にいつもとは違うものが見つかるかも知れません。
誰かの決めた基準に従って判断しているとしたら、すでにとらわれてしまっています。例えば、暑い日にジュースを飲もうとしたときに、砂糖は良くないんじゃないか、添加物入りで体に悪いんじゃないか。本当にそうでしょうか。真実はわかりません。自分で選び飲んでみることで、クスリ臭いと感じたり、調子が優れなければ、良くないものだと気づいたりして、次から避けていけばいいのです。
そんな風に、一度、とことん自由を味わってみませんか。
圭鍼灸院 院長 鍼灸師
マクロビオティック・カウンセラー
西下 圭一(にしした けいいち)
新生児から高齢者まで、整形外科から内科まで。
年齢や症状を問わないオールラウンドな治療スタイルは「駆け込み寺」と称され医療関係者やセラピストも多数来院。
自身も生涯現役を目指すアスリートで動作解析・運動指導に定評がありプロ選手やトップアスリートに支持されている。
兵庫県明石市大久保町福田2-1-18サングリーン大久保1F
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