才能の芽を摘んでしまわぬように
発達障害を持つ子どもたちには、知的発達に遅れがないため、その特徴が周囲から理解されにくいもの。前回、次男がハワイの小学校へ通っていたときに、担任の先生から毎日のように叱責を受け、トラウマを残した話をしました。その先生の態度も、発達障害に対する理解不足によるものなのです。
人一倍感受性の強い子どもたちは、周囲の理解不足による不適切な対応が積み重ねられることで、とても否定的な自己イメージを持ってしまったり、自尊心が低下してしまったりします。すると次第に二次障害を招くことになりかねません。情緒の不安定、反抗的な行動、深刻な不適応の状態など。
二次障害によってさらに扱いにくい子、問題ばかり起こす子、情緒的問題を抱えた子など様々なレッテルを上塗りされ、負のスパイラルにどんどんとはまり込んでいってしまいます。
大人たちは、その表層に現れた「問題」を自分たちがコントロールしやすいように排除したり除去したりしようとするものですが、本来は彼らの内に隠れた、抑圧されている言葉に耳を傾ける姿勢と、どんなところがうまくいっていないのか、深い愛情と優しさを持って見つめる視点こそ必要なのです。
もし、学ぶ環境、生活する環境、支えてくれる人たちがそばにいてくれる、という安心と信頼を感じることができるならば、本来とても純粋で素直な彼らは、しっかりと自尊意識を高めながら成長していくことは十分に可能です。二次障害で上塗りするような精神的遠回りをしなければ、時間をかけながら自分のペースで、できることもどんどんと増えてゆきます。強いこだわりを持つ彼らの特徴は、思わぬ才能へと開花させることも可能なわけです。そんな彼らの可能性に満ちた才能の芽を、周囲の大人たちが摘んでしまわないように注意を払わなければなりません。
理解してもらうために私がとった行動
ハワイから日本へ移住してまもなく、次男が通いだした横浜シュタイナー学園での出来事です。帰国後、次男は専門医の診断で発達障害であるということがわかりました。すぐに保護者会が開かれ、私は先生と保護者に発達障害についてより深く理解していただくために、具体的な特徴が書かれた本のコピーを人数分印刷して配りました。
まず「発達障害」といってもその種類は幾つもあります。自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎生発達障害、学習障害、注意欠陥多動障害、その他これに類する脳機能の障害。これらの症状はグレーに重なり合っていることも多いため、誤解のないように丁寧な説明が必要でした。説明の中では、実際に息子がどこに属する症状を持ち、日常の中でどんな困難を抱えているのかなどを説明しました。みなさんは真剣な眼差しでプリントに目を通し、真摯に耳を傾けてくださっていました。そして、最後に私はこう伝えました。「これは病院の診断では障害と診断されるものかもしれない。でも私は神様からのギフトだと思っています。すでに彼から沢山のことを教えてもらっています。私にとっては、ただ生きてくれているだけで、息子として生まれてきてくれたことだけで十分なんです……」。決して感傷的にならず、思ったままをケロケロっと伝えたつもりでした。ところがほぼ全員が先生も含めて泣いてくれていたのです。逆に私はみなさんの美しい涙に感動して、もらい泣きをしてしまいました。
数年の歳月が経ち、あの時のことを一人の保護者がこう振り返ってくださいました。「なんで泣いたのかな?多分、あのころ、子どもたちの戸惑いやさまざまなことが、本当は大人がしっかり理解して対応すれば良かったと納得して、アキトに不敏な思いをさせたっていう、気づきの涙だったのかな」。
ヒプノセラピスト・エッセイスト・女優
宮崎 ますみ(みやざき ますみ)
1968年愛知県生まれ。1984年クラリオンガールに選ばれ、女優として、舞台・映画・TVなど幅広く活躍。1995年結婚を機に渡米。米国で2児の息子を育てながらYOGAに傾倒し自己探求に専念。瞑想を深めていくなかで自己の本質に目覚め、ヒーリングとリーディングを始める。帰国後2005年、乳がんであることを公表。克服後2007年ヒプノセラピストに。同年11月厚生労働大臣より「健康大使」を任命される。自身の経験を活かした講演会活動やヒプノセラピスト養成に取り組んでいる。
ヒプノウーマンSalon『聖母の祈り』 http://salon.hypnowoman.jp
一般社団法人ホールライフクリエーション http://wholelifecreation.com
日本ヒプノセラピーアカデミー・イシス http://jhtaisis.net
日本ヒプノ赤ちゃん協会 http://hypnoakachan.com