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オルタナティブファーム宮古

自然の恵みいっぱいの宮古島から農業や商品開発するなかで感じたこと気づいたこと

オルタナティブ
ファーム宮古 代表

松本 克也 (まつもと かつや)

自動車メーカーなど14 年の研究職を離れ、2012 年5月に家族4人で宮古島に移住。約1万平米の畑で主に有機サトウキビを栽培し、黒糖蜜やキビ砂糖などの加工品を製造。
畑で黒糖作りが体験できるプログラムも準備中。その他、有機バナナの栽培、未完熟マンゴーの発酵飲料の製造に携わる。

植物の20の感覚?

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苗は寝かせて置いても立たせて置いても芽は上に伸びる

発芽不良部に追加で苗を植え付けるときは、垂直方向に植え付けられることが多い

「美味しく・楽しく・学べる」体験型観光でバナナ畑をご案内していて、お客さまが初めて見る・知る内容に「へぇ~ほぉ~」と驚き、感心・納得してくださることが多いお話をご紹介します。

サトウキビの生命の開始「発芽」にあたって、苗は上から3~5㎝程度の厚さの土を被せられた暗闇のなかで「どっちに向かえば太陽光を受けて光合成を始められるのか?」を間違えることのできない、命がけの選択を迫られます。

苗の植付けの際、苗を地表面に対して寝かせて置いても、立たせて置いても、同様に発芽するのですが、苗は「重力」を感じ取って、その反対方向、太陽に向かって、斜めにならないように姿勢を制御しながら芽を伸ばしていきます(負の重力屈性)。

根っこも同様に重力を感じ取っていて、こちらは重力と同じ方向、地中深くに向かって伸びていきます(正の重力屈性)。

植物には複数の重力感受機構がありますが、重力を感じ取る細胞内部の液胞中に漂うデンプン質が重力に引っ張られて、下側に沈降して溜まることで、自分がどっちを向いているか検知しています(デンプン平衡石説)。

無事に発芽したあとは、太陽光を探し当てる光センサーも同時に機能し始めます。先月号で紹介したフィトクロム(赤色光と赤外光を検知する能力)とは別種のフォトトロピンという光受容体が青色光を検知するのです。光に向かって茎の成長の方角を決定し(正の光屈性)、「節」の曲がり角を調整することによって、サトウキビは太陽に向かって、真っ直ぐに成長していきます。

植物の活動は原理・原則に従って無駄なくシンプルで本質的な活動です。ただ闇雲に、がむしゃらなわけではなく、たとえば光センサーの機能を目的に合わせて進化させていることは、すでにその一部を先月の連載で紹介しました。人間の五感(視・聴・嗅・味・触)に加えて、植物にはさらに15感が存在するという主張もあり(※)、環境に適応した進化を遂げている様子がわかります。

※参考文献「植物は<知性>をもっている 20の感覚で思考する生命システム」(ステファノ・マンクーゾ、アレッサンドラ・ヴィオラ・著、 久保耕司・訳/NHK出版)

- オルタナティブファーム宮古 - 2020年9月発刊 vol.156

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