育児をしていて、子どもが風邪を引きやすい、食が細い、いつも鼻水を垂らしている、すぐに疲れる、なんとなく意欲が感じられない、忍耐力がない、感情が不安定etc.このように思うお母さん方は結構多いようです。今回からは子どもの発育や発達と、漢方的な考え方、漢方薬の役割などについて、解説して行きたいと思います。
漢方では小児の身体的特徴を(1)臓腑嬌嫩( ぞうふきょうどん:内蔵の働きが弱い)、(2)形気未充(けいきみじゅう:形と機能が未熟)、(3)生機蓬勃(せいきほうぼつ:生命力が旺盛)、(4)発育迅速、という言葉で表現しています。また、五行でみると、木(肝)と火(心)の働きは活発であるが、土(脾)金(肺)水(腎)の働きは不足していると考えられています。また、五行の流れで子どもの成長発達の流れを大きく捉えることで、成長段階において、何が足りていないか、また何が多すぎるかを知ることもできます。
五行は木↓火↓土↓金↓水の順番に流れていますが、乳幼児発育も五行の順を追っていると捉えることができます。肝(木)が充実した状態で生まれ、まず筋肉(木)が発達し、首が座り、寝返りをうち、おすわりやハイハイができるようになり、1歳ころまでに歩く準備を整えます。重なるように心( 火)が充実し、循環器(火)が強くなり、言語と精神(火)が発達し言葉を覚えていく。次に脾胃(土)の働きである消化吸収(土)機能が2歳ころに十分に整い、意欲(土)がまして、自我が芽生える。3歳くらいで皮膚(金)機能が成熟し、大腸(金)の排泄機能も高まり、おむつが取れるようになってくる。魄気(肉体を支える気)(金)つまり意欲、欲望が強くなる。次に腎(水)の働きが活発になって5~6歳でおねしょが解消される。夢や希望を言い始め、目標に向かって行動できるようになる。「志」(水)をも持ち始め幼児期を終える。
(参考:つちうら東口クリニック 川嶋健吾先生)
では実際に、どのようにこの考え方を治療に使っていくかを説明します。小児の漢方治療での大原則は肝心の過剰を和らげ、脾肺腎の不足を補うということです。
特に脾の不足を補うことが重要です。当院では黄耆建中湯を多用しています。五行の脾(土)を補うことで胃腸を強くします。以前から書いているように、胃腸は免疫の臓器でもあるので、胃腸が強くなると、風邪をひきにくくなりますし、風邪を引いてもぐったりしにくくなります。漢方では、脾(土)の働きは、食べ物から後天の気を取り込むと考えられており、脾(土)を補うことで元気が出てきます。五行の表で五神のところを見ると脾(土)に対応するのは意智とあります。意智とは「意」:記憶力や思考力、思い煩いに苦しまないで落ち着く力。「智」:熟慮した上で、最善の判断を下す心。つまり、脾(土)を補うことで、物事をよく考え行動に移す力、意欲が湧いてきます。
(つづく)
五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
五臓 | 肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 |
五腑 | 胆 | 小腸 | 胃 | 大腸 | 膀胱 |
五神(五精) | 魂 | 神 | 意智 | 魄気 | 精志 |
五主 | 筋 | 血脈 | 肌肉 | 皮毛 | 骨髄 |
山内昌樹
医師 山内昌樹氏 平成19年まで一般小児科医として診療を行うかたわら、統合医療を志しYHC矢山クリニックで小児科を担当。平成22年12月佐賀市内に『統合医療やまのうち小児科・内科』を開院。 医師となってから、重病の患者さんが劇的な回復をすることや子どもの生命力の素晴らしさなどを経験するも、個人差を考慮しない画一的な治療、ステロイド薬や免疫抑制剤の副作用など、西洋医学の限界を感じる。 漢方薬や代替療法と西洋医学を融合して治療を行うYHC矢山クリニックで小児科を担当、病気の真の原因を学び、実際の診療で効果が見られることを経験。 |
統合医療やまのうち小児科・内科 当院では漢方薬を中心に、代替療法、西洋薬を一人ひとりに最も合うように治療します。乳幼児から御高齢とわず、未病の治療や健康維持から、慢性疾患の治療まで幅広く診療を行っています。 〒849-0915 佐賀県佐賀市兵庫町藤木772-3 電話:0952-33-8500 http://www.yamanouchishounika.jp/pc/ |