パンデミックに見舞われた一年が終わり、収束が見えないコロナ渦で2021年を迎えました。新年の晴れやかなムードにそぐわないかもしれませんが、今月号はさらなるパンデミックの恐怖について書かせていただきます。
冒頭から厳しいお話になりますが、今回のCOVID-19によるパニックは序章にすぎず、今後も致死的で感染性の高いウイルスによるパンデミックが起こります。人類が、なぜ次々に新しい感染症が発生するのかを理解し対処しないかぎり、「起こるかもしれない」ではなく、「いつ起こるか?」という認識が必要になるのです。
本当のパンデミックは大量の畜肉を供給する工業的畜産から起こると予測されています。家畜の世話をする人の靴やネズミ、ハエ等が、野生動物の糞を畜産工場内に運び、病原体が侵入します。家畜が密集するうえに、日光が入らず、風通しが悪く糞の始末が不十分な環境は、ウイルスや細菌にとって格好の培地となります。また「三密」の条件が揃った過酷な環境で飼育される動物は、ストレスで免疫力が下がって、感染リスクが高まっています。屠殺のために車に積まれる際にさらにストレスがかかり、感染した状態で屠殺され、汚染された状態で食肉として出荷されます。日本でも養鶏場や養豚場で集団感染が発生し、すべての家畜を処分したというニュースをたびたび目にします。
細菌に対しては抗生物質で対処が可能ですが、驚くべきことに米国で使われる抗生物質の70%が家畜に投与されています(欧州では家畜への投与は禁止)。鶏は抗生物質を毎日投与されると、菌と戦うためのエネルギーを体重を増やすことに回せるので、ブロイラーは産まれて6週間で食卓に上ることができます。しかしこの様な抗生物質の乱用により抗生物質耐性菌が生まれ、そのための新しい抗生物質が開発され、のいたちごっこになり、ヒトが感染症にかかったいざというときに効く薬が、なくなってしまうのです。
1960年代に抗ウイルス薬が初めて開発され、中国の養鶏工場では飲み水に入れて投与されてきました。このため1997年に香港でヒトへの感染が確認され、パンデミックを引き起こすことが恐れられている鳥インフルエンザ(H5N1)に、この抗ウイルス薬は効かなくなってしまったのです。
コロナウイルスと同じRNAウイルスであるインフルエンザウイルスは複製のたびに変異を繰り返します。水鳥の腸に感染し、水を介して感染を繰り返していたインフルエンザウイルスは畜産工場内の陸上動物に感染すると、腸以外の臓器に感染する変異種が生きのびることになり、ヒトに対しても病原性と感染性の高いウイルスができあがって、ここから次のパンデミックがやってくると考えられています。畜産工場、または中国のウエットマーケットや、ニューヨーク等のライブバードマーケットのような食用の動物が生きた状態で売買される生鮮市場から、本当に怖いパンデミックが発生するのです。
根本的な対処方法とは
この内容はマイケル・グレガー先生が昨年出版された「How to Survive a Pandemic」からです。568ページのうち2/5が引用文献で構成され、内容のすべてが科学的根拠に基づいています。マイケル・グレガー先生が4年前に執筆された「How Not to Die」も同様に非常に多くの研究と論文をもとに、科学的事実のみから執筆されていて「食事のせいで死なないために」というタイトルで日本語でも出版されています。あらゆる生活習慣病で死なないための方法は、プラントベースホールフードの食生活を実践することであり、次のパンデミックを起こさない方法は、皆が肉、乳製品、卵を食べなくなることで工場的畜産がおこなわれなくなることです。