最近、私が皆さんにお伝えしているのは「ちゃんとしない自分でも大丈夫!(ちゃんとしなくてもいい)」「頑張らなくてもいい!」を繰り返し頭のなかでリフレインしましょうということです。
風邪で受診された方、胃の調子が悪くて受診された方も、精神的な問題で受診したわけでもないのに、気づいたら診察中の会話は僕のワールドに突入しています。もちろん気の流れから、この話を必要としている人に対して、アドバイス(の押し売り)もしています。でも多くの方は泣き出したり、目を潤ませたりされるので、心に響いているのだろうと勝手に満足しています。先日「カウンセリングもなさっているのですね」との患者さんの問いに「趣味でやっています」ととっさに本音を言ってしまいました(笑)。心の仕組みがわかると、気分が軽くなります。元気が出ます。だから関心を払わずにはいられません。過去の記事もあわせて読んでみてくださいね。
共感する力を育もう!
「ちゃんとしなくてもいい」「頑張らなくてもいい」ということに抵抗がある方が多いと思います。ちゃんとしなくてもいいって「ダメなやつになる」「イイカゲンな人になる」というイメージがあるかもしれません。そうはなりたくなくて、今まで頑張って「ちゃんと」してきた人も多いと思います。「ちゃんとしないなんてとんでもない!」という方もいます。そういう方に、お母さんは厳しかったですか、と尋ねると、たいてい「厳しかったです」という返事が返ってきます。父親や祖父母が厳しかった、という方もいらっしゃいます。またまったく真逆で「いい加減なお母さんだった」とのお答えも。一見共通点がないように思えますが、ちゃんとする、頑張るという点では、表に現れる性格が同じ傾向です。心のなかの動きに共通点があるからなのです。
わかりやすいのは、お母さんのしつけが厳しかった場合。子どもがきちんとしないと怒る、無視する、機嫌が悪くなる母親の場合、子どもは怒られないように、振り向いてもらえるように、笑顔になってもらえるように、頑張ってちゃんとするようになります。
次に父親や祖父、または祖母が厳しくしつけるタイプだった場合。子どもが父親や祖父母に怒られているときに、お母さんがかばってくれたり、後からでも「よしよし、怖かったね」とフォローしてくれると、心の傷は浅くてすみます。しかし、お母さんがただ眺めているだけだと、子どもは「お母さんは私が困っても助けてくれない」と感じます。怒られないように頑張ってちゃんとするようになっていきます。またお母さんが、お父さんや祖父母に常に怒られるような家庭だと「お母さんが怒られないようにちゃんとしなくちゃ」と思う子どもになります。お母さんがいい加減な人だった場合では、自分がちゃんとしないと困ったことになると子どもは考えます。母親は頼りにならないと思って、頑張って早く大人になって、ちゃんとしようとします。
これらのお母さんに共通するのが、子どもの心に共感する能力があまり発達していないということです。たとえば、子どもが転んで泣いているときに「転んじゃったね、痛かったね、嫌だったね、大丈夫?」と言ってくれる母親なのか、「なんで転んだりするの?」「あなたが不注意だから転ぶのよ」「もう、お洋服が汚れちゃったじゃない」と言って、子どもの心に寄り添ってくれない母親なのか。気持ちをわかってくれない母親だった場合、子どもの心にとって、実は大きなトラウマになっています。子どもは「自分の気持ちを100%母親にわかってもらいたい!」と思っています。わかってもらえなかったとき、小さな心に大きなショックを受けてしまいます。そしてそのショックから逃れるため、ちゃんとして、お母さんにわかってもらえないという経験を減らすように頑張ってしまうようになるのです。(続く)