昨年末より病気を食事で治療した実例を紹介してきました。
病院での治療をおこなわず、PBWF(プラントベースホールフード:植物性の食材をなるべく精製加工することなく食べる)とSOS(Salt=塩、Oil=油、Sugar=砂糖)フリーの食事を徹底し、結腸がんと糖尿病、心臓病などの生活習慣病を克服されたハワイの知人の症例、甲田療法を基本とする食事と大学病院の治療を併用し、21年間がんと共存した後、ついに病を克服された日本人の症例をお話ししてきました。
専門施設を利用する選択肢
前述の方々のように独学での実践も可能ですが、死を宣告されるほどの深刻な疾患の克服を目指す場合は、食を中心とした生活を徹底的に見直す必要があり、その場合、専門スタッフの力を借りるという選択肢もあります。今号からは2回に渡って私が実際に訪れた施設についてご紹介します。
「食事で病気を治す医療施設」。そのようなものがあるとは、10年前の私は思ってもみませんでした。大学時代は、病気は薬や手術で治すと習いましたし、大学病院に来るほどの病気は原因不明であることが多く、一生に渡ってさまざまな薬を投与するものの治すことはできず、苦しんで亡くなっていかれることを知りました。医者になってからは、日本抗加齢医学会で甲田療法のセッションがあったり、美容について連載させてもらっていた『日経ヘルス』という雑誌に甲田先生が特集されていたりして、見聞きはしていましたが自分とは無関係に感じていました。
フロリダのウエスト・パームビーチにあるHippocrates Health Instituteには2017年4月に訪れました。年に2回だけ募集される特別プログラム、ドクターデイズに参加することができたのです。このプログラムは、最短期間で専門家に深い影響を与えるように設計されていて、具体的には毎朝自分で搾ったウィートグラスジュース、昼と夜には10種類以上のスプラウトが並ぶオーガニックローフードビュッフェで食事し、好きなときにいつでもグリーンジュースを飲みながら、広大な庭園に点在する施設でハードな講義を受けるというものです。3週間分を3日に詰め込む研修には24人の医療関係者が世界中から参加していました。
多岐に渡るプログラムのなかの一つではウィートグラスとスプラウトの効用と育て方を教わりました。ウィートグラスには牛乳の11倍のカルシウム、オレンジの7倍のビタミンC、ほうれん草の5倍の鉄が含まれ、抗炎症作用、代謝促進、免疫強化、血液活性化、体のアルカリ化効果が期待できます。現地でスプラウトとウィートグラスの栽培キットが販売されていたので、日本で実践するために購入。かさばるトレイを持って飛行機に乗ったことは良い思い出です。
滞在中、3週間のプログラムを終えた40人余りが参加する卒業式に参加させていただきました。卒業生がおこなうスピーチでは末期ガンと言われた人が例外なく良くなっていく話が披露され驚きと感動を覚えました。この施設では末期がんのほか、ウェイトコントロール、自己免疫疾患、関節炎などの慢性的な痛み、糖尿病、心臓病、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、高コレステロール血症と高血圧症、肌状態の改善など、さまざまな疾患と症状に対応しています。ランチやトリートメントのみを受けに来ることも可能で、私も2019年の学会でオーランドに滞在した際、スプラウトのランチを食べるためだけに片道2時間余りドライブして再訪しました。
次回は2016年に訪れたメキシコのSanoviv Medical Instituteで、日本で治療法がないと言われたALS(筋萎縮性側索硬化症)患者が回復していく瞬間に立ち会えた話を執筆します。