先月号のコラムでは、家庭裁判所における少年事件の手続について、ご紹介しました。
今月号では、弁護士の少年事件への関与の仕方についてご紹介します。
弁護人と付添人
刑事事件において、被疑者や被告人のための弁護活動をするときの弁護士の地位は、「弁護人」です。これは、憲法にも登場するものですが(憲法34条、37条3項)、具体的な弁護人の権利や役割については、刑事訴訟法という法律に規定されています。
少年事件についても、事件が家庭裁判所に送致されるまでは、刑事事件として、捜査機関が捜査をおこないます。したがって、この段階における私たち弁護士の地位は、「弁護人」です。
しかし、少年事件が家庭裁判所に送致されると、そこから先は刑事訴訟法ではなく、少年法が適用されることになり、これに伴い、私たち弁護士の地位も、「弁護人」から「付添人」へと変わります。
弁護人も、付添人も、被疑者・被告人や少年のために活動するという点で共通していますが、それぞれの手続の目的や内容に応じて、活動内容には異なる面もあります。
以下、一般的な付添人の活動について、ご紹介します。
少年や保護者との関係
すでにご紹介したように、事件の送致を受けた家庭裁判所は、事案が軽微な場合などを除き、「審判開始」の決定をし(少年法21条)、非行事実の有無や、少年の再非行の可能性などの調査をおこないます。
また、事件の送致時に、家庭裁判所が、少年に対して「観護措置」という決定をし、少年が少年鑑別所に送致されることがあります(同法17条1項2号)。観護措置の期間は、実務上、4週間弱とされることがほとんどであり、その期間内に、家庭裁判所で審判がなされることになります。
したがって、付添人は、4週間弱という限られた期間にさまざまな活動をする必要があります。
そうした限られた期間に付添人がすることは、少年の立場に身を置き、裁判所などに対して未熟な少年の意見を代弁するとともに、少年が立ち直るための多方面の活動をすることです。
具体的には、家庭裁判所に送致された非行事実自体が誤っている場合には、その誤りを主張する必要があります。
非行事実がある場合には、少年と面談を繰り返して、非行事実の内容について確認し、少年に自分のおこなった非行としっかり向き合うよう働きかけて、内省を促します。また、少年の保護者や職場の上司などと面会し、少年が社会に復帰したときの環境を形成するよう努めます。このような付添人の活動は「環境調整活動」などといわれており、少年の再非行の可能性を低下させる重要な活動です。
裁判所との関係
先月号でご紹介したように、事件が家庭裁判所に送致されたあと、裁判所調査官が、非行事実や少年の家庭環境などを調査し、裁判官に報告します。そして、この報告が、裁判官の判断に大きな影響を与えます。
そこで、付添人は、裁判所調査官にこまめに連絡し、時には面談をして、少年の状況や環境調整活動の状況などを報告します。そして、審判の前には、家庭裁判所に対して、付添人の意見書を提出し、少年に対する処遇についての主張をします。
審判では、付添人は少年や保護者に質問をし、少年や付添人の主張に沿う回答が得られるように努めます。
以上が付添人の活動の概要です。次回は、具体的な事案を示しながら、付添人の活動をご紹介いたします。