人の影響によって本来の生息地域から離れ、別の地域に入り込んだ生物を「外来種」と呼びます。私たちの身近にいるウシガエルやアメリカザリガニ、セイヨウミツバチなども外来種です。
害虫や害獣の駆除、食用などの目的で歓迎されて持ち込まれた動植物が、実はまったく役に立たなかったり、既存の生態系の破壊や一次産業への被害などが露見したりして、生態系や経済に重大な影響を与え、後になって嫌われ者になった外来種の事例は多く存在します。今号では沖縄で見られる嫌われ者の外来種の一事例をご紹介します。
悪名高い動物として最も知られているのは、やはりマングースでしょう。サトウキビ畑に被害をもたらすネズミとハブの駆除を目的として、動物学者により1910年にバングラデシュから17頭のマングースが沖縄に持ち込まれました。しかし、ハブの駆除の成果は上がらなかったうえに、絶滅危惧種に指定されているヤンバルクイナ、ハナサキガエルやオキナワキノボリトカゲなど、多くの在来生物がマングースに捕食され、生態系に甚大な被害をもたらしました。被害が露見してから、マングースは昆虫類、鳥類、爬虫類、哺乳類から果実まで食べる雑食性なので、わざわざ危険を冒して猛毒を持つハブと戦うことはなく、もっと安全に食べられる生き物を狙うであろうことや、マングースは昼行性、ハブは夜行性なのでそもそも出くわす機会が少ないことが指摘されました。
天敵が少ない島の生態系で生息してきた沖縄の在来生物にとって、大陸の過酷な生存競争を生き抜いたマングースの攻撃は圧倒的で、結果、マングースは3万頭にまで爆発的に個体数を増やしました。
沖縄本島では2000年からマングースを駆除し、在来生物の個体数を取り戻す活動が始められ、一定の成果を上げています。しかし、マングースの根絶は難しく、現在も活動が続けられています。さまざまな要素が相互に影響を与え合う生態系のバランスを維持することの難しさを感じる一事例としてご紹介しました。
マングース