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カンボジア地雷除去支援

江角泰 (えずみ たい)

NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。

【Vol.23】地雷畑で起こる世界のエネルギー問題と環境破壊

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前号から引き続いて、テラ・ルネッサンスが、村落開発支援を実施しているカンボジア北西部、バッタンバン州のタイ国境地域の話です。テラ・ルネッサンスが支援しているオッチョンボック村では、昨年12月に降った大雨で、収穫間近というときに作物がすべて台無しになったことは、前号で書きました。村人たちがなぜトウモロコシやキャッサバ、大豆など、単一の作物ばかりを栽培するのかを聞いてみました。村人たちは、「自分たちは、栽培したくて、トウモロコシやキャッサバを栽培しているわけではない。他の野菜や果物も高く売れるマーケットがあるのであれば栽培したい。でも野菜や果物はとても安く、マーケットがない。」と話していました。では、トウモロコシやキャッサバはどこにマーケットがあるかというと、実はカンボジアではありませんでした。

国境が近いタイでは、タイ政府が、キャッサバやサトウキビから製造したバイオエタノールの利用促進を図るため、ハイオクガソリンやレギュラーガソリンのガソホール(エタノール混合ガソリン)への置き換えを進めています。ガソホールは現在、E10(エタノール混合比率10%)およびE20(同20%)の販売が開始されており、ガソホールとガソリンに価格差を設けるなどの対策を採っています。また2008年中には、キャッサバを原料にしたエタノール工場も8カ所が稼働を開始し、今後もタイにおけるキャッサバ需要は増加するとみられています。

トウモロコシはバイオ燃料にはされていませんが、タイでは家畜の飼料原料として需要が増加しています。しかし最近では、バイオエタノールの原料になるキャッサバの価格が高値で推移していることから、トウモロコシ生産者がキャッサバへ転作するケースが増加しています。主要飼料原料であるトウモロコシは飼料需要量の約4割を占めることから、その価格動向が及ぼす影響は大きいのです。このため、トウモロコシなど飼料原料の委託契約栽培を実施することで免税措置が受けられるタイ政府とイラワジ・チャオプラヤ・メコン経済協力戦略(※1)加盟国(以下、ACMECS加盟国と表記)の合意(※2)
を活用して、カンボジアやラオス、ビルマなどにおいてのトウモロコシ生産が増加しています。飼料用トウモロコシをACMECS加盟国で生産した場合のコストは、タイ国内生産に比べ10~15%安いとしており、今後も委託栽培を拡大するだろうと予想されます。

これによってカンボジアでも大きな変化が出てきました。2005年に、かつての紛争4派の1つ、ポル・ポト派の拠点だったタイ国境の街、パイリンの地雷問題を調査した時のこと。道路から30mほどの土地はすでに地雷撤去が終わっていました。しかし農民たちによる開墾は、その30mを超えてさらに奥地まで進んでいたのです。話を聞けば、「もちろん地雷があって、自分で地雷をいくつも取り除いた」といいます。ある人は取り除こうとしたときに事故に遭い、足を失ったり、手を怪我したりしていました。それでも「ほかに住む場所がない」といいます。そして2008年、再び訪れた村には、まさに地雷撤去が行われているすぐ横に、キャッサバがびっしり生い茂った畑がありました。そのとき初めて、村人たちが畑に何を植えようとしていたのかが分かりました。地雷撤去ができないほど生い茂ったキャッサバ畑には、地雷撤去団体も赤いどくろのマークを立てることしかできませんでした。しかし、それも焼け石に水。最貧困層の村人は、地雷があるからといって収穫時に地雷原へ入らないとは限りません。おそらく生活のために地雷原へ入ってでも収穫をするのだろうと思います。

2008年カンボジアにも初めてキャッサバを原料としたエタノール精製工場ができました。韓国企業が運営する工場ですが、驚いたことに製造されるバイオエタノールはカンボジア国内での消費用ではなく、ヨーロッパへ輸出するのだといいます。結局世界的なバイオ燃料ブームによって、貧困層が収入を確保するために地雷畑での作物を栽培したり、もともと豊かな熱帯雨林だったところを伐採してキャッサバやトウモロコシ畑に変えてしまったりしたのです。貧困層が地雷の被害に遭うことだけでなく、この地域の生態系や環境の破壊も心配されます。そもそもバイオ燃料ブームは、大量に消費している石油燃料からの脱却を目指しているからにほかなりません。それは大量に石油を消費している日本も関係ないとはいいきれないのです。地雷の被害に遭う人たちと、私たちの生活。まったく関係がないようでいて、今の世界は、どこでどう世界中の人たちとつながっているかわかりません。ただ、環境破壊にしろ、地雷被害にしろ、まず真っ先に被害を受けるのは、ほとんど石油やエネルギーを消費しない生活を送りながら、地雷畑で作物を栽培しているような貧困層の人たちなのです。

※1:
イラワジ・チャオプラヤ・メコン経済協力戦略(Ayeyarwaddy ─Chao Phaya ─ Mekong Economic Cooperation
Strategy:ACMECS):タイによる周辺の後発開発途上国(LDCs)への南南協力体制で、2003年4月のタクシン首相による提案に基づき、同年11月にミャンマーで第1回会合が開催されたことに始まる。当初、加盟国はタイおよびビルマ(ミャンマー)、カンボジア、ラオスの4カ国だったがその後ベトナムが参加し現在は5カ国となっている。

※2:
タイは加盟国からの特定農産品10品目の輸入に際し、合意された委託栽培契約スキームに基づく品目である場合、輸入関税を免除するとした。免税措置は調印後即日施行。なお、加盟国間での税関手続きの簡略化に関する協議も同時に持たれた。対象農産品はトウモロコシ、カシューナッツ、インゲン豆、キャッサバなど。

江角泰(えずみ たい)

江角泰(えずみ たい)氏
NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス中学校建設プロジェクトも担当中。

- カンボジア地雷除去支援 - 2009年7月発刊 Vol.23

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