自らの身体を通して、おいしさと健康を生み出す陰陽ライフ株式会社　社長　花井良平氏

オーサワジャパン、日本C I協会、海の精などで育んだ見識をもとに、自社でマクロビオティック食品や調理器具を企画販売、プレマシャンティ®の商品開発にも携わっている、陰陽ライフ株式会社社長の花井良平さん。その商品開発の源は、原始的な方法にあった!?　主力商品の開発秘話を通して、花井さんの人柄に迫ってみました。

オレンジと茶色の中間のような色合いのカットソーは、自社で取り扱う「古伝のむ澁『玉の澁（柿渋）』」で染めたお手製の服。柿渋は、自然療法の書籍にも登場する、古来より活用されてきた万能健康飲料

マクロビオティックに興味を持つきっかけは、6歳上の兄の存在が大きかった。私は愛知県に住む普通の高校生でしたが、折しも時代は1970年代。東京の大学に進んだ兄は、学生運動に没頭してドロップアウト、都会でマクロビオティックにはまって、ついには実家にまで玄米を持ち込みます。

わが家の主食が色を帯びるようになった数ヶ月後、今度は私も、兄を追うように進学で東京へ。いつしか大都会で、マクロビオティックに興味を持つようになって、兄と同じように社会運動に傾倒するようになります。

妻との馴れ初めも、「生存への行進」という、革命の叫びがきっかけでした。1979年、大学を卒業した5月に反原発、有機農業、自然海塩やマクロビオティックを広めるべく、私は同志とともに、北海道から沖縄まで、日本を徒歩で縦断することになります。

そこでマクロビオティックの創始者・桜沢如一氏が創設した、日本C I協会のスタッフだった女性と知り合った私は、道中を常にともに過ごし、やがて彼女が妊娠していることを知ります。もはや社会運動どころではなくなった私を拾ってくれたのが、オーサワジャパン。マクロビオティック食品、自然食品の販売会社で、学生のころから勉強会に足繁く通った、東北沢の日本C I協会ビル1階には本社と売店がありました。

いささか不純な動機で、この業界に足を突っ込んだ私でしたが、その19年後の1998年にオーサワジャパンの社長になるとは、つゆも思っていませんでした。その後、2004年に日本CI協会に移籍、2006年に海の精に転職し、2010年に陰陽ライフを立ち上げました。とはいえ、あくまで社員は私だけ。この方針を徹底するのは、己の志を曲げずに、国産素材で安心、本当においしくて健康にプラスになるものを販売していきたいから。今後もわが社の従業員はひとりです。

おすすめ商品のなかに「玄米&葛クリーム」があります。私が体調不良の際に、ひらめいた商品です。もともと「玄米クリーム」という商品があったのですが、これに葛を混ぜて食べたところ、劇的にお通じがよくなって、生き返る心地がしました。私はこんなふうに、よく自分の身体で実験をして、新商品を開発します。

また「玄米&葛クリーム」の誕生には、3・11の影響もあります。私は横浜で商品の営業をしている際に、被災しました。自宅兼会社は千葉県の柏市にあったため、交通機関がストップして帰宅できなくなってしまいました。急遽、横浜にある避難場所、体育館で一夜を過ごすことになります。

そのとき、カバンには営業用に持ってきた当時販売していた「玄米雑炊」が2、3袋入っていました。震災当日は、コンビニにもスーパーにも食料品がありませんでしたし、また避難物資も不足していたので、私は玄米雑炊のレトルトの口を少しだけ切って、ときどき中身を吸いながら、飢えをしのぎました。すると身体の底から、力がみなぎってくる気がします。

翌日、電車が動き始めたため、満員電車を乗り継いで自宅まで帰りました。帰路も玄米雑炊をチューチューと吸いながらの道程です。ペットボトルも容易に手に入らない状況でしたが、水分補給も、これひとつで事足りました。

この経験から、どうすれば玄米雑炊が、もっと身体にいいものになるかを考え始めました。避難生活の最中にも口にできる、より健康的な食品をとの思いが強くなったのです。国産有機玄米と粒子の細かな国産本葛粉、自然海塩の「海の精」が入った「玄米&葛クリーム」なら、これひとつで主食の摂取も、水分補給・栄養補給・塩分補給も可能。葛の整腸効果も期待できます。

もちろん「玄米&葛クリーム」は避難食専用ではありません。いわずもがな、マクロビオティックの基本は玄米食。200回噛んで飲み込めば、その間に玄米がたっぷりと唾液を吸って、おなかもいっぱいになります。満腹中枢が刺激されるからダイエット効果があり、それだけで1kg痩せるといわれるほどです。もちろん出す力、お通じもよくなって、内臓の働きも活発化します。

ただ、すぐには玄米食を始められないという人も多いでしょう。そういう方は、まず1日の1食目、朝だけでも、「玄米&葛クリーム」を食べてみてください。「梅肉エキス入りねり梅」と組み合わせると、さらに整腸効果が増します。

梅干しとご飯を一緒に食べることはあっても、熟す前の青梅から作る梅肉エキスをお供にすることはありません。しかし私は一度、このふたつを組み合わせてご飯を掻き込んでみました。すると翌朝、これまた劇的にお通じがよくなった。この商品も、自分の身体で実験をして開発した商品です。

自宅で陰陽ライフを立ち上げたのを機に、私は兼業主夫になりました。妻が勤めに出ているので、家にいるときは代わりに私が家事をします。料理も自分で作るようになったので、おのずと実験の機会も増えてしまいます。

また自ら料理することで、体調に合わせて献立を考えるようにもなりました。おかげでますます健康になって、もうずっと休肝日を設けていません。桜沢如一氏の同志で、1960年代に「自然食品センター本店」を立ち上げた小林類蔵さんは、体調を鑑みながら自ら料理も作って、生涯お酒を嗜んで、95歳で大往生を遂げられました。私はまだ65歳。いつかその境地に達したいと密かに企んでいるんです。