アヴァンギャルドでいこう!
大学生4年のとき、母校の中学に教育実習に行きました。
最後の授業が終わったとき、指導の先生がこう言ったのを覚えています。
「塩見君は金というより、いぶし銀的で、高温のようには見えないけれど、とても熱いね」と。
僕は、このことばをいまも大事にしていて、以来、講演等でも目指すところは、「低温でしっかり熱く伝える」です。
そんなぼくなのだが、熱いことばが好きです。
前回は、水系の清らかなことばを紹介しましたが、今回は選りすぐりの「情熱系、ミッション系のことば」を、ことば貯金の中から紹介しましょう。
P・F・ドラッカーは「私は人々の熱意なしに物事がうまくいったのを見たことがない」といいます。
政治でもまちづくりでも商店街の再生でもきっとそうです。
自分も含め、周囲を見渡してみましょう。
熱意はあるかなと。
与謝蕪村論で有名な芳賀徹先生は「いつの世、どこの国でも詩人や画家はその作品のどこか一面、一部分にせよ、時代を抜きんでた前衛(アヴァンギャルド)たるところがなければ、結局、彼は古典となりえず、後世に残ることがないように思われる」という。
これは、ぼくにとって「人生のベスト10ことば」の1つです。
ぼくたちは「時代を抜きんでた前衛たるところ」を持っていたり、創造に励んでいるだろうか。
アインシュタインは、こんなことばを残しています。
「わたしは天才ではありません。ただ、人より長くひとつのこととつき合ってきただけです」と。
ぼくの「人より長くつき合ってきたひとつのこと」って何だろう。
とてもすてきなことばですね。
何によって憶えられたい?
20世紀のフランスの神学者シモーヌ・ヴェイユは「人に対して問いかけられる本当に意味のある質問」とは、「あなたは何をやり抜こうとしているのか」だといいます。
ぼくは何をやり抜こうとしているのかな。
「やりたいことがはっきりしている人にとっては幸福な時代だ」。
これはゲームクリエーター・渡辺浩弐さんのことばです。
この『らくなちゅらる通信』の読者の方は、やりたいとがはっきりしている人が多いように感じていますがいかがでしょうか。
最後にもう一度、ドラッカーに関する印象的なお話を紹介しましょう。
ドラッカーが13歳のとき、宗教の素晴らしい先生がいたそうです。
教室の中を歩きながら、「何によって憶えられたいかね」と聞きました。
でも、誰も答えられなかった。
先生は笑いながらこういったそうです。
「今答えられるとは思わない。でも、50歳になっても答えられなければ、人生を無駄にしたことになるよ」と。
ドラッカーは生涯、この「何によって憶えられたいか」を自らに問い続けました。
最近、大学の授業で1年生に、このドラッカーのことばを紹介してみました。
伝わったかわからないけれど、ときどき思い出してくれたらうれしいです。
長く続けてきたことは天職のヒントだそうです。
半農半Xもことばの誕生から20年超え。
こうして長く続いてきたことを考えると、僕はこの道をこれからもコツコツ情熱をもって歩んでいったらいいのでしょう。
半農半X研究所代表
福知山公立大学地域経営学部特任准教授
総務省地域力創造アドバイザー
塩見 直紀(しおみ なおき)
1965年、京都府綾部市生まれ。
「半農半X(=天職)」コンセプトを20年前から提唱。
ライフワークは個人~市町村までのミッションサポート、コンセプトメイク。
著書(『半農半Xという生き方【決定版】』など)は翻訳され、台湾、中国、韓国でも発売され、海外で講演もおこなう。
http://plaza.rakuten.co.jp/simpleandmission/