昨年は長雨、今年は干ばつに見舞われているイタリアや西ヨーロッパです。農作物のつくり手にはかなり厳しい年が二年も続いています。アサクラアイテムのオリーブもトマトソースのミニトマトもジャムの原料のフルーツも、影響を受けているのが実情です。
平成5年に日本の米が冷害で大不作だったのを覚えていらっしゃる方も多いかと思います。タイ米が出回り、その味と風味の違いに戸惑ったのを私もよく覚えています。あって当然のはずのことがそうではない、ということをしみじみ感じた年でもありました。
私たちは農作物である米や大豆、野菜など毎日いただいているわけですが、「それが無い」は現代では、特にあのタイ米を経験していない若い人たちは想像するのもなかなか難しいかと思います。
米は粒を見ればタイ米と国産のうるち系の形の違いを私たちはよく知っていますが、オリーブオイルはそうはいきません。果実から油だけを取り出すので、もともとの果実がどのような状態かがわかりにくい農産加工品です。加工しなければ食べることができない農産物はまだまだごまんとあります。
天候次第の農作物
私の扱うオリーブは、天候不順によりこれまでに2回、つまり二年ほど不作で『無い』年がありました。「今年はごめんなさい、一本もありません」と、その年は、お客様にお詫びをし、理解していただきました。
無い年というのも珍しいですが、そういうときは、どのような状況になるのかをはっきり現場で見ることもできた皮肉な年でもありました。
ほとんどのオリーブオイルは『無い』となると、他の産地(国内も国外も)から調達し同じ瓶に詰めるかまたは古い年産のオイルと混合して製品にしていました。その混合した事実はラベルに記載義務はなく、言い代えてみると、瓶の中に入っているオリーブオイルがどこで栽培され加工されたかが最終的にふたをあけて使う方にはわからないようになってしまっています。
あなたの口に入るものの由来
野菜は遠くに自在に移動できるものではありませんよね。そのままの姿からある程度判断できると思います。しかし、加工工程を経てお店に並ぶ食べ物については、多種多様の材料から作られており、それらは一体どこで誰によって、どのように作られたかまで調べることは困難です。製造者さえ、それをすべて把握するのは難しいのが現状です。オリーブオイルひとつとっても記したように現状は厳しく、それはどのような食品の追跡をしてみても同じようなものではないかと想像できます。
このような現状を見て多くの方にお伝えしたいのは、だれによってどのように作られたものか、食べものの由来を意識してみてはいかがでしょうか?ということです。自分や大切な家族の口に入るものだからです。
きちんとつくられた食品は、まず、おいしいです。そのおいしさを実感しご自分の舌をものさしにし、食品をチョイスするようにされたらと思います。
夏も過ぎオリーブ果実もオイルをどんどん蓄えている時期を迎えています。厳しい干ばつの今年の気候を乗り越えて実るオリーブのクオリティが期待できます。できあがる黄金のオイルの滴りを搾油機から出てくるのを見るのは最高の喜びです。農作物の実りの収穫と製品になった喜びは、すべて同じだと思います。
太陽と大地、そして、生産者が汗水たらして作る“本来の食品”を、みなさまにも食べていただきたいです。
アサクラ 代表
朝倉 玲子
(あさくら れいこ)
一般企業、有機農業に携わった後、イタリアに滞在し有機農家民宿やミシュラン三ツ星レストランにて料理修業。オリーブオイル鑑定技能講座で学び、オリーブオイルの素晴らしさに開眼。本物のシングルエステートを探し、エキストラバージン・オルチョサンニータと出会い、故郷会津若松に戻り輸入開始。オリーブオイルの良さと使い方を伝えている。
http://www.orcio.jp