先月号では当院でおこなう食事で不調に対処する「栄養外来」について書きました。がんや生活習慣病など深刻な病気も、慢性湿疹やニキビ、アレルギー性皮膚炎、頭痛、慢性的な下痢や便秘、生理不順、月経困難、不妊、不眠など「不定愁訴」といわれるような疾患も、(食)生活習慣を変える指導で治療をおこなっています。栄養外来を担当してもらっているのは副院長の中森いづみ医師です。彼女は当院で形成外科医として働いていたある日、「小児科を学ぶためにしばらくクリニックを離れたい」と申し出てきました。医学部卒業後10年目でまだ小学校にも上がっていない二人の子どもの子育て中の女医が当直も頻繁にある研修医をすることは本当に大変なことです。覚悟のある彼女の申し出を応援するしかありません。そして彼女は3年半の小児科研修をやり遂げ、当院に戻ってきてくれ、見事小児科専門医にも合格しました。2013年に栄養外来を設けていた当院ですが、特に難しい小児の栄養外来がおこなえるようになりました。今号は特別に中森副院長に執筆を担当してもらいます。
小児科専門医中森いづみ副院長
私は京大医学部卒業後研修医を終了するとすぐに形成外科を専門とし、ご縁あって鈴木形成外科に勤務しました。鈴木形成外科の特徴の一つは、日本でいち早くあざのレーザー治療を開始した院長がほとんどのあざが治療開始年齢が低いほどよく治ると気がつき、クリニックにたくさんの赤ちゃんの患者さんが来院していることです。
私はもともと未来ある子どもたちの診療に興味がありました。そして、自身の出産後、子どもに発達障害があることがわかり、当時の行政が勧める療育だけでなく実際に改善が得られる方法はないものかを模索したところ、栄養療法をおこなうことで効果が期待できることを知りました。自身で栄養療法を学び、実践して子どもの改善を目の当たりにすることで、同じように困っているほかの方達にも改善する方法があることを知らせたいと思うようになりました。そのためには子どもに関する基礎的な知識をしっかり持っていた方がよいと考え、小児科を学び直すことにしました。
現行の西洋医学は急性疾患や怪我などの治療には大変有用ですが、発達障害やアレルギー、アトピー性皮膚炎など慢性的な病態にはほとんどの場合治療法がなく症状を一時的に抑えるだけの対症療法しかありません。子どもは大人よりも食事や環境から受ける影響がとても大きいです。特に現在なにか困った症状を抱えている子どもはそれらに敏感でさらに影響を受けやすいのです。5歳くらいまでの幼児期は食事を吸収するための腸管が未熟で腸内細菌叢も変動が大きいためこの時期の過ごし方はその後の健康に大きく影響します。
出産前後の親の栄養状態が子どもに与える影響も大きいです。未来の子どもの健康状態を最適に保つためにも親となる大人が健康的な生活、特に健康的な食事を心がけることは大変重要です。なにかトラブルが生じてからでも対処は可能ですが、そうなる前に家族みんなで予防するに越したことはありません。問題がある子どもたちは、その原因が食事や環境にあることを教えてくれます。
これから発展させること
小児科の診療体制が整ったこと、そして多くの方にクリニックの診療内容を知ってほしいという思いから昨年8月にクリニック名称を「鈴木形成外科」から「鈴木形成外科 小児科」に変更しました。今すぐに医療機関にかかる必要がないながらもなにかしらの心配がある親御さんや、子育てを模索されているご家族は多くいらっしゃるはずです。そのような方たちに広く私たちの取り組みを知っていただき、子どもたちがよりよい未来を手に入れるお手伝いができればと願っています。