先月号で月経に伴う不調と低用量ピルについて書きました。日本で1999年に解禁された低用量ピルはオンライン診療の普及と製薬会社の販促活動の効果で急速に処方が拡大しています。低用量ピルは避妊効果の他、月経不順、月経困難症、月経前症候群の軽減が見込めますが、月経に伴う不快な症状を人工的に抑えるので子宮や卵巣等の問題に気付きにくく、重篤な副作用の血栓や肝機能障害などについてはほとんど注意喚起されていないことが問題です。
今月は更年期前後の不調と対処法について私の経験を中心に書きます。
私は10代から月経困難症に苦しんでいたのですが、36歳で第1子を出産後改善し、月経周期も規則正しくなりました。50歳の時、母が他界したのですがその通夜の朝に24歳のときに親の反対にあって仲を引き裂かれた元彼から連絡がありました。28年来の夢が叶うと再会を楽しみにしながら8ヶ月ほど経ったころ、予定日を一ヶ月過ぎても生理がこなくなりました。あわてて女性産婦人科医を探して「どうしても子どもが欲しいのです」と相談しました。処方されたホルモン剤の服用を始めるとすぐに出血が始まりましたが今度は2ヶ月以上経っても出血が止まりません。これでは旅行にも行けません。分子栄養学を学んだ今になってそのころの採血結果を見返すと、よく普通に生活していたと驚くような貧血でした。婦人科医は「出血が止まらないのは困りますねぇ。薬を変えましょう」とおっしゃいました。すると出血は止まりましたが、生理がこなくなりました。担当医から「閉経しました。子どもは一人いるからいいじゃないですか。今からもう一人育てるのは大変ですよ」と言われ絶望しました。東日本大震災に伴う原発事故による放射能汚染の心配から安全な食と栄養について探究の道に導かれ始めた時期のことです。
医者も知らないホルモンバランス
まずコリンキャンベル博士の著書『CHINA STUDY』に出合い、プラントベースホールフードの食生活でほとんどの生活習慣病の予防と改善ができることを知りました。ジョン・リー先生の『医者も知らないホルモンバランス』(日本語版2010年発行)を始めとする女性とホルモンバランスに関する一連の本に出合いエストロゲン優位の考えを知るのはしばらく後になってです。
一般的に閉経期にホルモン補充療法を受ける目的はホットフラッシュや心悸亢進、易疲労感やうつなどの更年期症状の緩和のためや骨粗鬆症の予防目的です。しかし、ホルモン補充療法が心疾患による死亡率を高めることや大腿骨頸部骨折を減らす効果がないことは大規模疫学研究で証明されています。
更年期が病気になった
アメリカで閉経期にホルモン補充療法がおこなわれるようになったのは1960年代です。閉経しても女性らしさを失いたくないという女性の心理を捉え、効果や副作用について十分な検証がされないまま、当たり前のようにおこなわれ、日本をはじめ多くの国に波及したのは製薬会社の営利的目的によるものに他なりません。日本で症状がない人に「閉経したのでホルモン補充療法をしているの。いつごろまで続けたらいいのかしら?」と初めて相談されたのはもう20年も前のことです。実際に、日本でも更年期障害の症状がある方が昔に比べ増えています。これはがん、心臓病、脳卒中、糖尿病、腎臓病、アレルギー、自己免疫疾患、うつ病などの精神疾患、アルツハイマー病などの神経疾患と同様、主に食生活の変化によるものと考えます。更年期障害の場合は乳がん・子宮体がん・卵巣がん・前立腺がんや前号で言及した子宮内膜症や月経困難症と同様、乳製品や牛肉(ひき肉)中のエストロゲンが大きな原因となっていますがエストロゲン優位(過剰)とその対処方法については次号に譲ります。