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ながれるようにととのえる

身体の内なる声を味方につけて、生きる力をととのえる内科医、鍼灸をおこなう漢方医のお話

やくも診療所 院長・医師

石井恵美 (いしいえみ)

眼科医を経て内科医、鍼灸をおこなう漢方専門医。漢方や鍼灸、生活の工夫や養生で、生来持っている生きる力をととのえ、身体との内なる対話から心地よさを感じられる診療と診療所を都会のオアシスにすることを目指す。
やくも診療所/東京都港区南麻布4-13-7 4階

自分を生きる

投稿日:

子どものころから、びっくりするほどの人見知りで、引っ込み思案な性格だった。小学生のとき、授業で先生の質問の答えがわかっても、手を挙げて自分の意見を言うことができないほどだった。自分の意見を言って、他者からなにか言われることへの怖さが、人一倍強かったのかもしれない。それでも高校生になるころには、少しずつ自分の意見を言えるようになってきた。それはいろんな意見があってもいいと思えるようになってきて、社会的に正しいとされている答えを言わないといけないと思い込んで自分で自分を縛っていたのが薄らいできたからかもしれない。きっと自分で自分を生きにくくしていたのだろう。

いま、そのころの自分に会えるなら、「肩の力を抜いてごらん。誰かに否定されても、自分が自分を否定しないであげたら、生きるのはもう少し楽だよね」と言ってあげたい。

普段からいくつかの会社の産業医をしている。簡単にいうと、産業医とは会社で働いている人が心地よく仕事ができる体制を模索する手伝いをすることだ。例えば、ある人が身体や心の不調で休職せざるを得ない状況になったとき、産業医は休職する当事者とその主治医、会社側との、三者間の通訳のような役割をすることが多い。主治医や産業医としての経験から感じるのは、当事者と主治医、会社側の三者が互いに「伝えきれていない」、なんともいえないもどかしさがあるのだ。当事者と主治医のコミュニケーションの行き違いや、当事者は会社に知られると都合が悪くなるような困りごとを、産業医には言いにくいこともある。もし当事者に言いにくさを感じさせてしまっているなら、それは自分の産業医としての力不足だ。しかし、困りごとを正直に話したら、会社からマイナスの評価を受けてしまうのではないかという心配があるのも当然だろう。そういうこともあって、当事者と会社側、産業医がみな、モヤモヤしていることが多いのだ。そのモヤモヤを、少しでも言葉にして話すこと、そして、一緒に働く仲間や環境に、なんとか折り合いがつけられること。それによって、働くことが少しでも心地よいものになったら本望だ。困りごとを、誰かと知恵を出し合って、なにか楽に生きるヒントはないかと探し続けることは、まさに養生そのものなのではないかと感じている。身体や心が困っている状態にやさしさを向けてあげられるのは、主治医でも、産業医でも、家族でも、会社の人でもなく、やはり自分自身しかいないのではないだろうか。

また、働く現場では、生産性や効率化が叫ばれるようになった反面、長時間労働の抑制、休みのノルマも同時に叫ばれている。効率を重視した結果、なにかをものにするまでの丁寧に試行錯誤する時間を削り、仲間と語らう時間すらも無駄と切り捨てざるを得なくなっている気がするのだ。果たして、この風潮をわれわれは望んでいるのだろうか。

そして、この効率化の風潮から外れ無駄だと切り捨ててしまったものを取り戻していくには、心地よく生きていくうえでなにを大切にしていきたいのかを考え続けることが重要なのではないだろうか。例えば、誰かに認めてもらい評価されることを求めるだけではなく、自分で自分を認めることをしてみたり、自分のなかにいくつかの視点をもってみたりすることは心地よく生きていくうえで助けになるのではないかと思っている。

最近、自己肯定感という言葉をよく目にするが、どうもこの言葉にモヤモヤしてしまう。自分を肯定しなければいけないという感覚よりも、自分を否定しない視点があるだけで、生きているのがほんのちょっと楽になる気がするのだ。これらの視点は、他者の価値判断に左右されることなく「自分を生きる」ことに繋がるのではないかと思っている。

- ながれるようにととのえる - 2024年2月発刊 Vol.197

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