先月号のコラムでは、少年事件の手続における弁護士の活動について、ご紹介しました。
そこで、今月号からは、具体的に私が経験した少年事件を少しアレンジして、具体的な弁護士の活動をご紹介したいと思います。今月号は、具体的な事案を紹介する前提として、特殊詐欺事件一般について、ご紹介したいと思います。
特殊詐欺事件の類型
ご存じの方も多いと思いますが、特殊詐欺とは、電話などをして人を騙し、指定する口座にお金を振り込ませたり、直接現金やキャッシュカードを交付させたりすることで経済的な利益を得る犯罪で、ほぼすべての事案が複数名の共犯者により実行されます。
息子のふりをして高齢者に電話し、お金を騙し取る「オレオレ詐欺」が典型例ですが、特殊詐欺は「オレオレ詐欺」だけではありません。
例えば、電話で警察官や公共機関の職員を名乗り、「キャッシュカードが不正に利用されている」などと騙して、被害者の方からキャッシュカードを受け取り、暗証番号を聞き出すものや、医療費や税金について「還付金があるので手続きをしてください」などと言って被害者にATMを操作させ、犯人の口座に送金させるものなどがあります。
最近では、医師を名乗る者が、高齢者に対して、「息子さんが病気で手術が必要」などと電話で話し、息子を名乗る者も重ねて話すなどして多額の現金を騙し取るという事件が、しばしば報道されています。
警視庁のホームページによれば、特殊詐欺は全部で10の類型に分類されるとのことですが、いずれの場合も、高齢者などを騙して経済的利益を得る行為である点で、共通しています。しかも、被害額が数百万円になることが多く、1000万円を超えることも珍しくありません。
共犯者の役割
こうした特殊詐欺は、被害者の善意につけ込む犯罪であり、社会的に許されないものではありますが、一般に、特殊詐欺の共犯者内で役割分担があることを知っておく必要があると思います。
まず、主導的な立場で犯行に関与する首謀者がいます。次に、首謀者ではないものの、他の共犯者に指示を出したり、他者を誘って犯行に関与させたりする立場があります。
具体的に犯行を担う者としては、まず「かけ子」という役割があります。これは、被害者に電話をして、騙す役割です。
次に、「受け子」という役割があります。これは、騙した被害者から現金やキャッシュカードを直接受け取る役割です。
それから、「出し子」という役割があります。これは、被害者によって振り込まれたお金をATMから引き出す役割です。
このようにさまざまな役割がありますが、受け子や出し子は、首謀者らの指示にしたがう従属的な立場である一方、目撃されたり防犯カメラに記録されたりすることで、検挙されるリスクが大きい役割です。
少年と特殊詐欺
ところで、こうした特殊詐欺事件に少年が関与する例は少なくありません。その場合、少年は主に「受け子」の役割を担います。令和3年の統計によれば、検挙された全受け子のうち約20パーセントが少年です。
このことは、立場の弱い少年が、首謀者たちに利用され、リスクの大きい「受け子」の役割を担わされていることを示していると思います。
私が最近経験したのも、まさにそのような事案でした。その事案については、次回ご紹介したいと思います。