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きのくに子どもの村通信より

堀 真一郎 (ほり しんいちろう)

1943年福井県勝山市生まれ。66年、京都大学教育学部卒業、69年、同大学大学院博士課程を中退し大阪市立大学助手。90年、同教授(教育学)。大阪市立大学学術博士。大学3回生のときにニイルの自由学校「サマーヒル・スクール」の存在を知る。「ニイル研究会」「新しい学校をつくる会」の代表をつとめ、92年4月、和歌山県橋本市に学校法人きのくに子どもの村学園を設立。94年に大阪市立大学を退職して、同学園の学園長に専念。宿題がない、テストがない、チャイムが鳴らない。週1回の全校集会を含むミーティングは子どもが議長。ニイルとデューイを実践において統合した教育を方針とするため自由学校を創設した。

【Vol.32】学校づくりのこぼれ話(13) ミーティングと教師ーその2

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きのくに子どもの村通信より

学校法人きのくに子どもの村学園
かつやま子どもの村小・中学校
かつやま子どもの村小・中学校の教育目標は「自由な子ども」です。生き生きとし、好奇心旺盛で、集団生活に必要なマナーを身につけている子どもです。

〒911-0003 福井県勝山市北谷町河合5-3
TEL 0779-83-1550 FAX 0779-83-1833
http://www.kinokuni.ac.jp/katsuyama/


たいへんだメシが来ない

 12月5日、水曜日、朝9時。

 かつやま子どもの村の寮の食堂に子どもと大人が集まってくる。臨時の全校集会である。朝一番のミーティングは開校以来はじめてだ。どの子も「いったい何や?」という顔をしている。議長の周平君(中1)が開会を宣言する。

 「大人の人、何が議題ですか?」

 まっちゃん(松岡さん)が手を挙げる。

 「緊急ミーティングです。心当たりのある人は今のうちに正直に名乗り出たほうがいいよ。」

 だれも手を挙げない。心当たりのある者もいるはずだが、もちろん手を挙げたりしない。

 まっちゃんが続ける。

 「実はたいへん困ったことが起きた。田中屋さんの都合で、あさってとしあさっての2日間、食事がこない。」

 子どもたちの反応は一様ではない。よかった、だれかが悪いことをしたわけじゃない。だけど食事が来ないのは大問題だ…。

 まず考えるのはコンビニだ。おにぎりか何かを買えばいい。

 「自分たちでつくる」という意見も出る。つくりたい子も少なくない。でも授業が…。好きなプロジェクトがつぶれる。コンビニのおにぎりだと500個くらい必要だ。つくる方が安い。小学校と中学校で手分けをしたら……。そこで私がひとこと。

 「特別のごちそうとか……」

たのしい議題いやな議題

 およそ25分後に結論が出た。

(1)3回分のうち2回は小学校と中学校の子が1回ずつつくる。
(2)夕食の1回は、有志(10人ほど)がつくる。

 1件落着。子どもたちは教室へもどって行く。有志の子の2、3人が「何をつくろうか」「スペシャルパーティだ」などと、もう相談を始めている。

 後日の子どものことば。

 「またやりたい。週1回とか」

 「今度は鍋料理がいい」

 「けど、田中屋さんは毎日大変なんやな」

 この日の話し合いには、子どもの村のミーティングの在り様がよく現れている。

 第一に、当たり前のことだが、楽しい議題の話し合いは盛り上がる。「だれかが問題を起こしたのでは」と予想したのに、そうではなかった。食事が来ないのはえらいことだが、自分たちでつくれるのだから、かえっておもしろい。こうしてたくさんの子が夕食づくりを申し出て、集会はいい気分で終わった。いやなことはあっさり、楽しいことはたっぷり時間をかけて、というのが子どもの村の大原則の一つである。

 子どもたちが「楽しい」と感じるためには、議題が「大きなこと」であり、ホンモノであるのがよい。遠足、サッカー大会、クリスマス会など、自主的な催しの計画は盛り上がりやすい。

大人の役割

 次に大事なのはユーモア。まっちゃんの最初の発言は抜群の出来である。これで子どもたちの気持ちがやわらぐ。気楽な雰囲気ができる。サマーヒルの二ールもそうだったが、私たちは時々ひねった言い方をしたり、子どもを挑発したり、わざとへんなことをいって、子どもたちの眠気を覚ましたりする。

 大人が気をつけるといいことはほかにもある。

 ◇発言は控え目にした方がよい。 よく通る落ち着いた声で、短く、 分かりやすく話そう。
 ◇混乱した議論を整理する発言も 大事だ。
 ◇時にはさりげなく子どものプラ イドをくすぐったり、アイデアを 出したり、第三の解決策のヒント を出したりもする。
 ◇小さい子、新しく来た子、落ち 着きのない子を抱っこする。
 ◇なるべく後方にすわろう。挙手 は少し遅れ気味にソッと。
 ◇子どもの話しかけには応じない(唇に指を当ててニコッとするのが 効果的)

子どもが決める
だけでは不十分

 私は、大人たちにいくつかの注文をつけた。まず三大原則。
 1.真剣に話し合いに参加する。真剣さを態度(発言、まなざし、相づちなど)で表わす。
 2.議論が交錯したら、交通整理をする発言をする。
 3.発言は短く、長くても一分以内で。一つの文は、活字にして70文字以内。そして、しかし、なぜなら、などでつなぐ。
 
 つづいて小原則。
 ◇落ち着かない子は抱っこする。
 ◇意見が対立したら、第3の道も模索する。
 ◇目立たぬように後方にすわる。
 ◇票決では、少し遅れ気味にそっと手をあげる。
 ◇ユーモアが大事。時にはボケ発言をして盛り上げよう。ニイルは、これが得意だったらしい。

 子どもの話し合いを大切にする教師が陥りやすい間違いが一つある。それは、「子どもが決めたので」とか「ミーティングで決まったから」といって、不適切な決定の言い訳をすることだ。いうまでもなく、子どもがミーティングで決めたからといって、妥当な結論とはかぎらない。子どもが決めるだけでなく、結論や決定が妥当であることが望ましい。
 もちろん子どもたちの結論や決定がつねに妥当である必要はない。妥当でないと分かれば、いさぎよくそれを認めて、また考え直す態度が育てばそれでよい。大事なのは、子どもたちが自分自身で考えて、適切な決定をする、そしてその決定を絶対とみないで、柔軟に修正したり、改廃したりする能力と態度である。そのために教師は間接的で周到な指導をいつも念頭におかなくてはいけない。

 
不適切な結論
適切な結論
大人
主導
A
B
子ども
主導
C
D
A 大人が決めて結論が不適切。論外。
B 大人が決め妥当な結論。普通の学校
C 子どもが決め不適切な結論。有効。
D 子どもが決め結論が妥当。理想。
望ましい順序は D > C > B

- きのくに子どもの村通信より - 2010年4月発刊 Vol.32

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