前回は、「本音の声」を聞くためには思考をおとなしくさせる必要があります、というお話でした。
思考は生きている限りなくなることはありません。でも、次々に湧いてくる思考をそのままにしておくと、脳内の思考を扱う作業領域がすぐにいっぱいになります。作業領域がいっぱいになるということは、気持ちに余裕がなくなるということです。いつもセカセカとして、セワしない気分になります。人間の脳はとても優秀なので、なんとかしてこのマルチタスクを処理しようと、限界まで頑張ってしまいます。そして一つの作業が終わったら、すぐに別の問題に気づいたり、以前から手を付けていなかった問題をもち出してきたりして、いつまでたってもこの作業が終わることはありません。
「今」を感じると思考が減る
気持ちに余裕をもち、ほんとうにしたいことに気づくためには、思考を減らす工夫が必要です。「考えないようにしよう」と思っても、「考えないようにしよう」という思考が増えるだけです。
顕在意識では、脳は一度に一つの作業しかできません。そして思考は過去と未来についてしか、働かせることができません。その性質を利用して「『今』を感じる」ということをすると、思考をぐっと減らすことができます。
一番簡単なのは、体の感覚に気づく練習です。「今、椅子に触れている体の部分を感じる」「今、空腹を感じる」「今、風のさわやかさを感じる」「今、香りを感じる」「今、体に洋服が触れているのを感じる」「今、呼吸の空気の流れを感じる」。これは、今はやりのマインドフルネスと同じ方法です。
思考によって「『今』を考える」ことはできません。「『今』は感じるもの」だからです。感じているときは思考が働かないので、気持ちが落ち着いてきます。気持ちがフラットな状態で、ほんとうはどうしたいのかを感じると、思考の邪魔が入りにくくなります。
想像からヒントを得る
思考の性質として、自分にとってネガティブな問題を探して、改善しようというものがあります。考え事の多くは、自分にとって問題があると感じていることから始まります。その問題をどうしたらよいかと考えているのです。自分にとってネガティブな事柄だと認識しただけで、血中にアドレナリンが分泌されて、血流が悪くなったり、イライラしたり、痛みを感じやすくなったりします。
逆に、ポジティブなことをイメージすると、体も心もリラックスします。そこで、これ以上ないポジティブを想定したうえで、ほんとうはどうしたいのかを感じてみましょう。たとえば、人間関係で悩んでいるのであれば「もし自分がどんなことをしても、世界中のすべての人が自分の味方をしてくれるとしたら、なにをしたいだろうか?」「どんな選択をしても、世界中のすべての人が、絶対自分のことを愛してくれるとしたら、どうするだろうか?」と想像してみてください。金銭問題で悩んでいるのであれば、「もし自分がなにをしても、必要なお金が必ず手に入るとしたら、なにをしたいだろうか?」「どんな選択をしても、結果として1億円手に入るとしたら、なにを選ぶだろうか?」と想像してみましょう。
場合によっては、極限のマイナスを想像してみることで、ヒントが得られることがあります。「世界中の人が自分の敵で、なにをしても1億円損する、という最悪の状況だったら?」「すべてのしがらみを無視して、やけになって、死ぬ前に本当にしたいことをするなら、なにがしたい?」という想像をしてみましょう。
ほんとうにしたいことが見つかると、エネルギーが溢れ出します。これをするために生まれてきたということがわかると、どんな困難も成長の糧にできます。生きる力が湧いてきます。