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ながれるようにととのえる

身体の内なる声を味方につけて、生きる力をととのえる内科医、鍼灸をおこなう漢方医のお話

やくも診療所 院長・医師

石井恵美 (いしいえみ)

眼科医を経て内科医、鍼灸をおこなう漢方専門医。漢方や鍼灸、生活の工夫や養生で、生来持っている生きる力をととのえ、身体との内なる対話から心地よさを感じられる診療と診療所を都会のオアシスにすることを目指す。
やくも診療所/東京都港区南麻布4-13-7 4階

「食」や「農」、「自然」に学ぶ

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漢方では冬の寒さは、生きる力に影響する腎臓や膀胱に関係があるといわれている。熊が冬眠するように、自然界では動きを少なくして、生きる力を減らさないようにすることも大切な時期である。しかし、この季節はクリスマスや忘年会、新年会、正月とイベントが多くなる。夏の暑いころよりも寒さに耐えるために、エネルギーを余計に欲する。また、身体にとって必要以上に食べ過ぎたり、飲み過ぎたりしやすいときでもある。実はこの時期こそ胃腸をよりすこやかにしておくことは、自分でできる身近な風邪予防だ。胃腸が不安定になっているところに暴飲暴食が重なると、食べたものを消化するために内臓は休みなく働き続けねばならなくなり、疲弊して余力がなくなる。すると、寒さや多忙、寝不足、外的な要因にも影響を受けやすくなってしまうのである。

高校生の夏、熊本にある菊池養生園の竹熊宣孝先生が主催する、『人間と自然といのちを考えるセミナー』に参加した。『鍬と聴診器』や『土からの医療』などの竹熊先生の著書は、わたしの愛読書であり、今の自分の原点でもある。竹熊先生は「医は食に、食は農に、農は自然に学ぶこと」をモットーにかかげている。そして、白衣を作業着に着替え、聴診器を鍬に持ち替えて、農園を持つめずらしい診療所をやっておられた。はじめから病気と食生活の結びつきが強いことに注目し、養生に重きをおいた医療に、信念をもって取り組まれていた。そのころ、年末年始には「食わぬ養生会」をおこない、食を断ち、身をもって飢えることを通して、『食の大切さを知りいのちを意識する養生』を伝えていた。飽食に生きるわれわれが、食べ過ぎを減らし、必要最小限のものだけを食べることは、人の生き方において大切なことではないだろうか。日本の大学の医学部では、病気を診断する診断学と、それを手術や放射線、薬などで治療する治療学については必死に学ぶが、養生や食に関して学ぶことはほぼなく、予防という視点にはなかなか目を向けられにくい。生活での工夫や、食養生などによる地道な取り組みは、一人ひとりが自分で決意し、一日一日やるしかないのである。だからこそ、身体や心が楽になるための小さな取り組みを、できれば楽しみながら探していたいと思うのだ。

便秘と鼻炎で漢方薬がないとスッキリしないという患者さんがいた。漢方では鼻は大腸と肺に関係があると考えられている。あるとき、その方が1泊2日の断食合宿に参加した。すると、漢方薬がなくても見事に便秘と鼻炎が改善していた。この方にとって、食のあり方を少しととのえるだけで、身体が症状を出さなくても大丈夫な状態だったのだろう。「あのときのプチ断食の経験が、普段食べすぎている自分を知る、良いきっかけになったんですね」と、ときどき一緒に思い出して振り返ることがある。

食べ物の情報があふれる今だからこそ、食を通して、いのちを考える機会を持つことを大切にしたい。なにをどう食べるか、それは誰がどのように作ったのか。農業に従事している人の健康や、その農作物を育む土や自然の環境はどうだろうか。人間が自然をむやみに破壊してはいないか。自分の身体や心をはぐくむ食をとおして、こんなふうにすべてが自然につながっていること。これらを想像することを忘れたくない。写真家の故・星野道夫さんが、『道端の身近な自然をとおして、訪れることのない遠い自然も、同時にただそこに在るという意識を持てること』これこそ「想像力」という豊かさだと記されていた。それはわたしにとってふと思い出す大切な言葉だ。

竹熊先生が、年末年始にあえて取り組まれていた「食わぬ養生会」が、今もなお、食養生におけるヒントを与えてくれているように感じる。さぁ、来年の正月は胃腸をととのえるところから始めようかな。

- ながれるようにととのえる - 2022年12月発刊 vol.183

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