東南アジアというと一年中暑いと思われがちですが、山の多いラオスでは乾期にあたる10月~12月、意外に冷え込みます。一年の大半は半袖にサンダルで問題ないのですが、この時期は空気が乾燥し、朝晩は上着が必要です。北部山岳地帯へ行けば、朝晩と日中の温度差が更に激しくなり、毛布をかぶらないと寝られません。
そんな寒いこの時期のラオスですが、暖房器具は一切ありません。一般のラオス人は家庭に炭火の七輪があるので、それで暖を取っているようですが、旅行者や外国人は上着を着込むことしかすべがありません。最近では輸入品の中国製の暖房器具があるようですが、まだまだ一般的ではありません。私自身、この寒さをどう対処しようか、毎年悩んでいるくらいなのです。
そこで私が通っているのが、薬草サウナです。元々は寺院や尼僧院での生活習慣の一環として、また信者に対する医療方法として受け継がれていたもののようですが、今では街中に存在し、ビエンチャン市民に親しまれています。薬草サウナの特徴は、ユーカリ・こぶみかん・タマリンド・ミントなどの葉、ウコン・生姜などの根を薬草釜で炊き、その蒸気をサウナ室に送り込むことで、薬草の香りを楽しみながら、血行促進・新陳代謝向上などの効果が得られるところです。いわゆるミストサウナなので熱すぎず、いつまでも入っていられそうな気がしてしまいます。
だいたいのサウナでタオルと浴室で体に巻く布を貸してくれます。ラオス人は一枚の布を巻いて入りますが、慣れない外国人用にゴムを入れて着脱を容易にしたものを準備してくれているところもあります。更衣室で着替えたら、お好みで水浴びをし、木造の浴室に入ります。内部は木のベンチが両側にあり、4、5人程度でいっぱいになってしまう小さなものです。しかし、扉を開けた瞬間に薬草の芳しい香りの煙が立ちこめ、入って数分で玉のような汗が噴き出し、体の芯から温まります。熱くなったら外に出て水浴びをし、また入る。それを繰り返していると、体の老廃物がどんどん流れ出ていくような、すがすがしい気分になります。外にはベンチが用意されていて、薬草を煮出したお茶が無料で飲めます。
市内には外国人向けの清潔なサウナもありますが、私が行くのはまさにローカル色100%のこの薬草サウナ。ベンチに座って、ラオス人の行動を観察しているととても面白いのです。主に女性ですが、牛乳、ヨーグルト、タマリンドなどを持ち込み、顔や全身に塗っているのです。そして真っ白、または茶色の顔のままでサウナへ入っていきます。どうやら体全体に塗ることで、そのエキスを吸収して美肌効果があると信じられているようです。しかし、困るのは浴室の床やベンチがそれで汚れていること。つるっとすべって転んでしまわないように要注意です。
ラオスと言えば、「メコンでビール」。しかしこの時期は寒くて辛いものがあります。そんなとき、サウナでさっぱり、ほかほかになってから川沿いへ繰り出すのもいいかもしれませんね。
駒崎 奉子
駒崎 奉子氏 ラオス・ビエンチャン在住3年。大学卒業後、日本での社会人経験を経てラオスへ渡り、日本語教師をつとめる。現在は日本人学校で教える傍ら、ラオス語翻訳や文筆活動も積極的に手がけている。 「こまごめ」は大学時代に名字からつけられたあだ名。 |