「美味しく・楽しく・学べる」体験型観光としてサトウキビ畑をご案内するなか、「へぇーほぉー」とお客様から驚きや感心の声が上がり、納得していただくことが多いお話をご紹介します。
「ざわわ、ざわわ」と揺れるサトウキビの緑色の若葉は、太陽の光を浴びて「糖」を合成します。 糖は、人でたとえると血管の役割をする師管を通って、茎の隅々に運ばれます。
熱帯作物のサトウキビにとって亜熱帯環境の宮古島の冬は寒く、越冬のために12月頃から糖を細胞内に蓄えます。『アリとキリギリス』の童話にたとえると、勤勉・堅実なアリさんのほうですね。梅雨が明けて夏を迎える7月近くになると、細胞内に蓄えていた糖をエネルギーに転換して、どんどん成長していきます。それはまるで育ち盛りの子どもと、その食費に貯金を切り崩す親の役目を同時にこなすかのようです。そして、また冬を迎えるころには糖を蓄え始めます。こうやって年間を通じてエネルギー収支の帳尻を合わせて成長していくのです。その姿は、年間の予算計画を立てる会社経営者のようにも見えます(笑)。このように自然の営みに無駄や滞りはなく、糖を光合成するサトウキビの若葉も生命活動の維持・成長に大変重要な役目を果たしていることがわかります。
私たちが収穫の恩恵にあずかるのは、糖が豊富に蓄えられた冬場です。その際、フレッシュな状態で迅速に処理することが黒糖の品質確保に大切な一要素です。そのために、サトウキビ先端の若葉の部分(梢頭部)だけを先に切り落とします。サトウキビにとって半殺しともいえる人間都合の行為ですが、サトウキビは驚異的な生命維持機能を発現させます。その話はまた来月に。