バナナは大きく育つと背丈が4~7メートル、幹の太さは50センチメートル以上にもなる「巨大な草」です。バナナの幹は葉っぱが幾重にも重なり合ってできていて、偽茎や仮茎と呼ばれます。ネギや玉ねぎのような構造で、外側から1枚ずつ葉っぱをはがしていくとなにもなくなってしまいます。「多年生の草本性果樹」というのがバナナの植物学的な分類で、「草本性=草」と「果樹=実のなる木」という矛盾をはらんだネーミングになっています(笑)。
では、葉っぱが重なっただけで立派な幹に成長できるのはなぜでしょう? それには「バナナは水食い」といわれることが関係しています。バナナの茎は80~90%あまりが水分で、「ほとんど水」でできています。約5ミリメートル角の小さいセル状の組織が、超高層ビルのように三次元に積み上がっていて、それぞれの小部屋に少しずつ水を貯水しています。その結果、茎全体としては50~100キログラムもの水分を蓄えて、一見どっしり構えているように見えるのです。
バナナに対して「木本性=木」の代表例としてヒノキを挙げると、その水分量は中心部分(心材)で25%程度。組織が緻密に詰まっていることがわかります。バナナが台風ですぐに折れてしまうのは、偽茎の名前が示す通り、「実は水を蓄えただけの草だから」ということなのですね。
では、なぜ草がこんなにも大きく上へと成長を遂げたのでしょう? これは私の勝手な推測ですが、ほかの植物との日照権争いを勝ち抜くため、なるべく上に抜きんでて、太陽の光を受けようとしたのではないかと思います。樹木に競争を挑んだ草として、大きな葉っぱを三方向に広げるバナナを見ると、また勝手に愛着が高まるのです。