今回は「美味しく・楽しく・学べる」体験型観光でバナナ畑をご案内していて、初めて見る・知る内容にお客さまが「へぇ~、ほぉ~」と驚き、感心・納得していただくことも多い話題をご紹介します。
サトウキビの苗を植え付ける際、苗は地表面に対して寝かせて置いても、立たせて置いても同様に発芽します。土のなかに埋まった苗がちゃんと上下を感じ取って太陽に向かって体をねじって、表土を突き破って顔を出します。光・重力・酸素・水、なにを検知して上下を判断するのでしょうね?
ということで次号以降、サトウキビのお話に入る前段階として、一般の種子の発芽について、光の観点にからご説明します。発芽に際して、光の影響を受けないもの、光があると発芽が抑制されるもの(暗発芽種子)のほかに、今回ご紹介する発芽のために光が必要なもの(光発芽種子)があります。
レタスなど種のサイズが小さい光発芽種子は、種のなかに蓄えられている養分が少ないため、発芽後すぐに光合成によってエネルギーを生み出す必要があります。そこで、それらの種子は必須3条件(水、酸素、適温)に加え、光が確保できることを予め確認してから発芽する機能も備えています。センサー機能を果たすフィトクロムという光受容体が、お気に入りの波長の光の存在を確認してから、発芽スイッチをオンにするのです。光合成に利用できる赤色光(波長650~680nm)を受光したら、発芽促進シグナル(PFR)、光合成に利用できない赤外光(710~740 nm)を受光したら発芽抑制シグナル(PR)を出します。
赤色光と赤外光との比は、直射日光を受けた場合(約1.15)と、他の植物によって光を遮られた場合(約0.1~0.4)で、大きく異なります。光発芽種子はこの差を察知して、他の植物との競争を回避して、発芽後の生存確率を可能なかぎり高めたうえで、発芽しているのです。このような光条件の相違を事前に検知することで、光発芽種子は自身の生育に向いた環境下で選択的に発芽していると考えられています。
フィトクロムの機能は、お引越し・転職などできない植物が身に着けた、高度な環境適能力のひとつなのです。