植物を観察していると、その機能や構造がとても自然の理に適った形で巧妙かつ精巧に形成されていることに驚かされることが多いです。今号では、ふとした発見から少し洞察を進めた結果、苦笑いの結論が隠されていた、そんな話題をご紹介します。
観光農園でご案内する『黒糖&島バナナスイーツ作り体験』では、作った焼きバナナとバナナアイスを、見た目にも彩のあるバナナの葉っぱのお皿に載せてご提供しています。食べ終わったバナナの葉っぱのお皿を見ると、焼きバナナが置かれていた部分だけが、元の緑色から薄黄緑色に変色していることがあります。まるで洗濯物の色移りのように、葉っぱの色素が焼きバナナに移ったとは考えにくいのです。では、なぜ色が薄くなったのでしょうか?
まず最初に考えたのが、海ブドウが夜に眠るといわれる現象です。日中、緑色に見えている海ブドウの粒々が、夜に光が当たらなくなると、透明に近い色に変化します。これは光合成が活発な日中に緑色色素を含む葉緑体が増加し、夜間は光合成の活動が低下するため葉緑体が減少することが原因のようです。しかし、バナナの葉っぱの場合、バナナアイスが載っていた部分には、太陽の光が当たらなくなったにもかかわらず、色が変わっていないのです。
続けて考えてみたのが、細胞内での葉緑体の移動です。光があまり当たらない環境では、光合成の効率を上げるために、より光が当たる細胞の表面に向かって葉緑体を移動させます。いっぽうで、光がよく当たる環境では、葉緑体が強い光によるダメージを受けないように、細胞の側面に葉緑体を移動させます。これは日照だけでなく気温の変化にも対応します。しかし、バナナの葉っぱの場合、この程度の色の変化が葉の色素の移動によるものとは考えにくいです。
いくつか考察してきましたが、結局のところ、葉緑体は40度以上の温度に曝されると損傷を受けて機能しなくなるようです。つまり、熱い焼きバナナが置かれた部分だけ、緑色色素が減少していた、という苦笑いの結論に至りました。
観光農園でご案内している黒糖&島バナナスイーツ作り体験で作るバナナスイーツプレート