恐ろしくも愛おしい私の仕事
「この仕事から外します」 研修の講師をして間もない頃、必死で仕事をしていた私に上司が言った言葉です。
研修の世界は大変厳しく、研修内容の質を求められるのはもちろん、その研修を担当する講師も徹底的にチェックされます。
姿勢が良くなければいけないのは当然、下に物を落とした時のしゃがみ方、ホワイトボードに書いた字を指す時の手の見せ方も見られます。着るものは、細かい身だしなみマニュアルに従ったもので、なお且つ、素敵に見せるもの。口角は常に上げ、基本は笑顔。真顔の状態でさえも怖い顔にならによう常に意識し、一言でも言葉を発する時には、その言葉の全責任を持ち、正しい日本語を使うのはもちろん、様々な立場の方がいる中で、誤解が生まれないよう、表現には細心の注意を払います。
これは、研修の間のみならず、研修開始前の担当者との打ち合わせから、休憩時間、終了後の懇親会まで、このルールが適用されない瞬間はありません。講師として動いている間は、常に360度チェックされ、講師自身も、360度に気を配ることが要求されます…
あの…読んでいるだけで、胸がギュっとなりません?(笑)
「私、こんなの嫌!」と思うかもしれませんが、これはこれで、結構楽しいのですよ。いわば、女優です。
いつもはボーっとしている私が、講師の時にはいかに完璧に講師を演じるか…私が仕事を大好きだった理由の一つが、ここにあったかもしれません。
大きな挫折
さて、話を冒頭の言葉に戻しましょう。
ある大きな企業から研修のご依頼を頂き、マニュアルに背かないよう、失敗がないよう、常に周りの目を意識し、良い評価がもらえるよう、たくさん勉強もしました。それにも関わらず、ある日、企業の担当者から私を講師から外すように連絡が来たのです。
ショックでした。どうして?こんなに頑張っているのに。講師らしく振舞い、内容だって充実させているのに、なぜ…
大きな挫折を感じ、しばらくは他の講師のアシスタントとして研修に関わっていた時、あるベテラン講師とご一緒する機会に恵まれました。最初に書いたような講師マニュアルを見ると、何だか機械的な人間になってしまうような印象があるかもしれませんが、そのベテラン講師はそれがまったくない。「この人の言うことなら聴いてみようかな」と思わせる不思議な力があったのです。
自分と向き合うということ
研修終了後、このベテラン講師に相談したところ、こんな答えが返ってきました。
「あなたは、自分と向き合っていない。自分とちゃんと向き合えない人は、人とも決して向き合うことはできない」
「自分と向き合う時間を作りなさい。自分はどういう人間か。なぜ生まれてきて、何を伝えたいのか。周りばかり見るのではなく、しっかり自分を見つめなさい」
この夜から、眠る前に月のテンポのCDを流し、お気に入りのお茶を淹れ、自分と対話する時間を作るようになりました。こんな経験は初めてでしたが、月のテンポが自然に力を抜いてくれて、優しく導いてくれました。
社会の中で生活をしていると、周りに目が行くことが多いですね。私は、マニュアルや周りの目ばかりを気にして、自分のことを疎かにしていました。
自分をしっかり見つめ、自分に想いをかけている人は、人としての穏やかさがある。厚みがある。安定感がある。説得力がある。
表面だけを作った安定感のない、説得力のない研修をしても、相手に伝わるはずがありません。
このことに気づき、自分を見つめる、自分を大切にする時間を持ち始めてから、私の研修スタイルが大きく変わりました。
無事に、その企業の研修に講師として復帰し、その5年後、その研修を担当する講師の総責任者になることができました。
自分の本当の声に耳を傾け、自分を見つめ、自分を愛する時間を持っていますか?5分でも1分でもいい。自分と向き合う時間を是非作ってみてくださいね。
片岡 由季
片岡 由季氏 武蔵野短期大学にて国際教養学科および秘書コースに在籍。 その後、玉川大学英米文学科に編入。 前職はNPO法人日本ケアフィットサービス協会にて「サービス介助士」の育成に携わり、全国の企業研修を担当。 2010年4月より父である片岡慎介氏の後を継ぎ有限会社ビュージックの代表取締役となる。 現在は、断食道場やサロンなどで「月のお話会」を行い、「なりたい自分」「輝く自分」になる為の月のテンポ活用法をお伝えしている。 |
ゼッテン・116 高周波をスピーカーから発信し、付属の可聴音CD(テンポ116の音楽)を流すことで潜在能力の活性化を図ります。 |