『あえて言うまでもなく、世界経済の混乱の度合いは深刻さを増してきています。2月の本稿で、『金融商品を買うより先に、食料を作り出せる田舎の土地をもっていることのほうが、大きなリスクヘッジ』という旨を表明しましたが、当時は「そんなばかなことを」とお思いだった方も、このような選択がより現実感を増しているのではないでしょうか。
経営の中枢に近い仕事をされていたり、直接的に投資をしている方にとっては、この事態はより深刻に見えます。それこそ毎日が陰鬱な方もいらっしゃるでしょう。一方、仕事や投資などに直接関わりのない人にとっては、『別に空の色が変わったわけでもないのだから・・・』というのが正直な印象でしょう。確かに、日々の買い物で物価の上昇を実感したり、度々倒産が報道されたりされるので、世の中はこれからさらに景気が悪くなるのだろうということがわかったとしても、肌で感じる印象はそれほど深刻には感じないのではないでしょうか。ここで一つ思い出すべきことは、後者のように、今も世界中の大半の人は、『毎日食べ、どこかで暮らし、友達や家族と話し、どこかに出かけ、何かを買っている』ということそのものには変化がないことです。お金に余裕があった人が、経営や投資の失敗で、失業したり暮らし向きが悪くなったりすることは確かですが、経済がどうなろうとも、必要な日々の暮らしは大きくは変わりません。
今回すっかり化けの皮が剥がれてしまったのは、端的に言えばこのような人々の日々の暮らしをベースにした実体経済と呼ばれる経済活動とは全く別の次元の、なんら根拠のない虚構が膨らみ上がって、それがはじけているだけに過ぎません。私は中国やインド、インドネシアなど、発展途上で、かつ巨大な人口を持つ国に行くことがよくあります。そこで感じる彼らの「よりよい生活をしたい」という欲求は非常に強く、腰折れするような要素は感じません。つまり、生活に根ざした経済拡大の余地はまだまだあるのです。ならば、虚構が現実を飲み込んでしまっている今の状況は、どんなにマイナスに見えようとも、正しく一度リセットされるべきだと私は考えています。そのときに相当な痛みを伴うとしても、です。
何度も繰り返しますが、私たちは毎日、天と人の力が合わさって出来たものを消費し続けています。そこにほんとうの経済を導き出す大きなヒントがあります。私たちは高度に発達した資本主義国に住んでいるわけですから、生活の質を高める、より「高度な品」を求めています。その「高度」の尺度は、以前ならばより化学的で、より先進的技術を用い、より均質で、より便利なものが「高度」でした。しかし、私たちの事業の伸展に伴ってわかってきたことは、そのようなニーズが依然ある一方で、確実に広がっているのが「ほんとうのことや、ものが欲しい」というニーズの広がりなのです。いろいろな加工を施して2週間で出来てしまう醤油もあれば、出来るだけ加工せず天地に問うて3年以上の時間をかけた醤油もあります。どちらがよりほんとうで、人に力を与えることになるのかは、もうご存じの通りです。私はそこに未来を感じるのです。つまるところ、先進国においては『温故知新』こそが、次の時代の経済の基盤となるというのが、私の目論見です。
もし、この先どうなるのかと不安な方がいらっしゃれば申し上げたい。このような「ほんとうのこと、ほんとうのもの」を消費して頂きたいのです。これらにはエネルギーがありますから、あなたの将来にぶれない力を与えてくれます。同時に、投資をされるのなら、激動の時代を生きていくために、まずはご自身の真の健康と幅広い知識のために投資をなさってください。そして将来のための投資商品をお考えなら「この世に形のあるもの」を検討されることを、強くおすすめしたいと思います。