夏がやってくると、「熱中症に厳重に注意」という呼びかけが、テレビやラジオで繰り返されることが多くなりました。私の子ども時代には、「光化学スモッグに注意」ということのほうが身近だったのですが、技術の進化で解決できるようになり、一つの大気汚染問題がよい方向に向かっていることを実感するとともに、「気温が高すぎる」という新たな問題が起きていることを感じるわけです。
冷え症は夏にこそ作られる
暑いから、熱中症が怖いからといって、室内で四六時中エアコンの冷風にさらされていると、運動不足や、外気との落差で自律神経が麻痺して、血行不良とそれに伴う冷えが体に浸透していきます。ただし、皮膚はある程度冷やしておかないと熱中症リスクが高くなるので、エアコンがある環境が悪いわけではありません。
また、熱中症予防には水分補給が必要だからと、冷たい飲み物をごくごく飲んでいると、熱中症にはなりにくいかもしれませんが、胃腸が収縮しながらも自律神経はなんとか体温の恒常性を維持しようと、フル活動の興奮状態になり末梢の血管が収縮します。
つまり、夏にあれこれ努力して体の内外を冷やすことで血液循環まで悪くなってしまうと、各臓器に供給される栄養や酸素が少なくなり、筋肉は固くなって体のあちこちがコリコリに、そして代謝は低下して太りやすい体質が出来上がっていきます。
私がジェラートを作ると決めたとき、もっとも先に考えたのがこの問題でした。口当たりのいい冷菓は、夏にはたまらない誘惑になり、熱中症対策にもなるのですが、だからといって冷えを固定してしまうものであってはならないのです。消化吸収されたあとで血流を促進してくれるジェラートの素材の組み合わせを考えれば、口当たりは冷たく、食べたあとでじわじわと体の血流を回復させ、元気の源になるという仮説をもちました。その仮説でレシピを編み出し、実際に販売すると、真冬でも「ここのジェラートは冷えない」という声が溢れるようになり、今年に入って試験をしてみると、次のような仮説通りの現象が確認できたのです。
他社のアイスクリームは食べた直後も、吸収されたあとも血流が減少します。つまり、普通のアイスを食べれば血流不全を起こし、健康を害するという一般の認識は正しいのです。このようなものを夏はもちろん、冬に温かい部屋で食べるのがおいしいよ、といって食べ続ければ確実に寿命を縮めます。一方で私が作るジェラートは、吸収されたあとに血流が増加します。食べ物として滋養を与えるものを厳選し、正しく組み合わせれば、このような不思議なことが起きるのです。
「ギルトフリー」=「罪悪感なし」という言葉の裏には、体に悪いとわかっているものの害をなんとか打ち消しておく、というニュアンスがあります。しかし、私が目指したのはそのレベルではなく、むしろ食べたほうがよりよいもの、つまり人に力を与える素材の織り合わせで新しいステージのジェラートを作ることでした。暑いからといって、昔になかったような生活習慣は絶対によくない、エアコンも冷たいドリンクもましてやアイスなんてろくなことがない、という原理主義的な物言いはある一面で正しくても、気候は変動し、嗜好も多様化しているときに我慢と根性だけでは生きるのが窮屈です。楽しく快適に過ごしながらも、快楽とセットでくっついてくる万病のもとになる冷え症には向かわせない、これが弊社の商品開発の一つの大きな着眼点です。
外冷内温TM
同じような考え方で生み出した私たちの製品があります。蒸し暑い日本の夏を快適に過ごせるよう、皮膚表面の体感温度は下げながらも、血流を促進する、という繊維製品です。冷やすのはよくないから、夏に毛糸をまとってください、ではそれこそ我慢大会です。私たちが生み出したのは、冷たく感じるのに実際には血流が促進されている、夏の生活習慣を変えることで、冬に深刻になる末梢の冷えにつながらないような夢の製品です。これに、外冷内温TMという名前をつけ、続々ラインナップする予定です。
夏の間に冷え症を深刻化させないために、重要なキーワードは「はら」と「くび」です。
アーユルヴェーダでは、消化吸収のプロセスを「火=アグニ」の性質とみなします。体を冷やし、その結果として血流が減少すると、この火を鎮火していることになり、不消化物が体内に蓄積し、それがアーマ(毒)となり健康を害すると考えます。この重要な消化力を落とさないよう、胃腸から子宮、前立腺といった「はら」、すなわち下腹部を冷やさないように保温することが重要です。そして足首、手首、頚など、「くび」と呼ばれる場所をエアコンで冷やしすぎないようにしましょう。
これだけで冬場の苦痛は激減します。ちょっと意識してみてくださいね。