私たちのような日本の自然食屋にとって、動物性素材は一切使わず料理を作る、またそれらに必要な植物性の素材を取り揃えて販売する、というのは実に当たり前のことで、最近取り組み始めたことではありません。しかし、昔から精進料理の伝統のある日本よりもむしろ、西欧諸国や中華圏を中心に動物性素材は一切食べないというヴィーガンやプラントベース食の広がりは近年凄まじく、むしろ日本のほうが周回遅れになってしまった、という現実があります。私も一年半のベジタリアン生活のあとインドから日本に帰ってきたときには外食で食べられるものがなく、ほんとうに困った時期があり、それが自然食屋を自ら経営するというひとつの動機になったくらいです。動物性の素材を食べないという決断をする動機には、宗教的な理由や動物愛護の観点、環境負荷を減らすため、または健康上の理由などさまざまなものがありますが、それがどのような理由であるにせよ、食についての個々人の選択を尊重したいという気持ちが私には長年あり、2016年にフードバリア®という概念を確立し、それを取り払うことを事業のひとつの柱にするという決断をしました。そのひとつの通過点がフードバリアを意識しなくてもすむ多様なバリエーションをもつプレマルシェのジェラートであり、さらに推し進めたのが弊社直営のレストランであるプレマルシェ・オルタナティブダイナーの食制限のレベルに応じて対応できるメニューのシステム化でした。
私は思想の押しつけほど嫌っているものはなく、同じ事柄、同じ事象についての認識でも立場や見方によって違う景色が広がっており、正しさを武器に相手を打ち砕き屈服させようとするやり方に嫌悪を感じます。これらの思想の押しつけや自分の考えが正義であり真実であると相手をやり込めてしまうやり方自体が戦争を生み出す根っこになると考え、逆にお互いの多様性を尊重することが戦争と距離を置く小さな市民のやり方である、と信じて植物食以外は悪である、という立場を決してとらずにやってきました。このような論議を注意して観察していただくとわかるのですが、自分の見解が正しいと強硬に主張する人になにかいうと、合理的な反論ではなく「あなたは勉強が足りません、もっと勉強してください」などと、圧倒的に上から目線の吐き捨てるようなコメントを残して話し合いを打ち切ってしまいます。これではディベートを通じた建設的な相互理解に至ることは未来永劫ありません。よって、私たちの仕事を通じた取り組みのポリシーは「その方自身の選択を大切にする」「選択ができる自由を提供する」ということに尽きるのです。
中川信男の多事争論
「多事争論」とは……福沢諭吉の言葉。 多数に飲み込まれない少数意見の存在が、 自由に生きるための唯一の道であることを示す
プレマ株式会社 代表取締役
ジェラティエーレ
京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。
プラントベースの自由
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肉も魚もおいしく植物に置き換え
オーガニック農業の先進国デンマーク。遺伝子組み換えも認めない欧州連合での市場を意識すると大豆でたんぱく質という結論は見いだしにくく、オーガニックプラントプロテイン社ではえんどう豆とそら豆から代替肉を考案しました。下ごしらえはお湯に浸けるだけ、肉よりもたんぱく質が多く、味が豊かなので、肉を使うレシピをこれに入れ替えるだけですぐいつものメニューがお肉なしで実現できます