自分に打ち勝つことが必要な一世一代の場面が、人生には一度や二度、いえ、何度も用意されているものです。
特に国を代表するような責任のある場面となれば、本当に「命がけ」です。
私にとってのそんな場面が、2016年の海外演奏会です。
その演奏会は、日本古来の「言霊」に西洋音楽を組み合わせた日本神話を元にする作品や、その精神が宿る文化を歌い弾くというものでした。
会場のひとつは、作曲家・音楽家のJ・S・バッハが活躍した18世紀から存在するドイツの伝統ある教会。
各界の有識者が集まる素晴らしい機会であり、日の丸を背負うつもりで臨まねばならない演奏会でした。
その演奏会最終日。
それまでさまざまな負荷がかかっていた体は限界を超え、発熱があったうえ、本番10分前には大量の下血。
吐き気と貧血もあり、呼吸も苦しい状態でした。
しかし、私は「自分に絶対に負けない」と心に決めて、ステージに立ちました。
これまで、どんな場面でも最大の力を出せるよう、諦めずに演奏する鍛錬をしてきた精神が、この新たなる挑戦により何かの境地に達したのでしょうか。
本番は、今までで一番よい演奏となり、大絶賛のなかで演奏を終えたのでした。
「究極の場に立たなければ、突き抜けるものは出てこない」とは、私がよく耳にしてきた言葉です。
その言葉通り、この命がけで挑んだ演奏会では、究極に凝縮されたエネルギーが、自分を超えて表現される、そんな体験をさせていただいたのでした。
思いがけぬ副産物
私が「絶対に負けない」と心に決めたように、「絶対」は「絶対」です。
「絶対」という言葉は、究極の場に立っていないから発することができるのか、一般的に軽く使われています。
しかし、「絶対」は「絶対」で、そうでなければ突き抜けたものは生み出せないと、私は思います。
話が飛躍するように思われるかもしれませんが、これは「誕生」にもあてはまります。
本当は誰もがこの世にうまれる前に、人生で昇華すべき課題を持ち、「絶対に自分に負けない」と心に決めて、命がけでうまれてきたと思うのです。
ただ、人というのは、何十年と生きるうちに、大切にしていた自分の「絶対」という初心を忘れてしまうのです。
今日こうして生きていることさえ、とても貴重で奇跡的なことなのに、それも忘れてしまう。
だからこそ、「絶対に負けない」と心に決めなければいけない場面が人生に何度も訪れて、そこで命がけで取り組むことで、新しい境地がひらけたり、大事な初心を思い出したりするのかもしれません。
私の海外演奏会での体験は、自分に打ち勝つための苦しくも素晴らしい場面だったのだと思います。
さらに、思いがけない副産物として、弾き歌いのメソッドの極みの練習曲が生み出されたのでした。
その演奏の動画は、i‐ROLLacademyのウェブサイトにてご覧いただけます。
拙い演奏ですが、私自身がi‐ROLLを使用し、約1年かけてピアノを学び直して挑んだ、新しい表現の世界です。
弾きながら歌うことの最大のメリットは、脳の活性です。
両手を使いながら声を出すことで、脳全体を使うことができる究極の健康法です。
さらに、i‐ROLLに乗ることで全身を活性化しながら、脳全体を使って表現することができます。
楽しいですよ!