政府は少子高齢化とそれに伴う労働人口減少を理由に、女性の社会進出の必要性を説きはじめました。遡れば、男女雇用機会均等法は1986年に施行されたわけですが、それから30年も経っても日本においてはあまり大きな変化は見受けられません。相変わらず、国会の先生方の中には「女性は子どもを産んでこそ」のような口汚いヤジを飛ばす方が少なからずいるわけで、変化というよりは、偏見だけが相変わらず横たわっている、といわざるを得ないのが現実です。弊社では、15年のあゆみの中で男性は私と1名だけという時期が少なからずあり、多くて数人、最近はやっと2割くらいになってきてバランスが取れてきたな、という感じですから、女性がいない(少ない)会社というものは、私の中には全くリアリティーがありません。女性がいるのは当然であり、大事なことを女性がすすめるのは、私たちにとっては日常そのものなのです。
海外で感じること
私たちの取引先の多くが存在するヨーロッパでは、たくさんの女性がオフィスで重要な仕事に就いています。役員や幹部クラスと食事にいけば、たいていそこに女性の姿があり、その席にいない場合には社長の奥様は別の会社の社長というパターンもよくあります。実際に私が会社を経営している中国やミャンマーではもっと顕著で、政府のオフィスに行けば上にいくほど女性で、男性の秘書が面会を取り次いでくれる、というのは普通の光景です。(ただしミャンマーは依然軍政下ですので、ほんとうの名義上のトップは軍人の男性ですが、実務レベルのトップは女性が非常に多く活躍しています。)東南アジアでは女性が社長というケースが非常に多く、たとえ男性が出てきても、実際上の経営権を女性が握っているというのも珍しくありません。とにかく彼女らはよく働き、実に聡明でもあります。弊社の中国事業トップの楊揚君(男性)はつい先日、台湾人女性と結婚し、沖縄で結婚式をするということでお祝いにかけつけました。式のあとの食事の席で並んだ二人の会話が面白いのです。彼女は、自分の職場から帰ってくると一番最初に彼に聞くのが「今日の売上げはいくらだった?」という質問だというのです。親会社の経営者である私ですら滅多に聞かないことを、毎日奥様が確認してくれます。結婚式の段取りもすべて彼女がコーディネートし、いつ、どこで、何時から式があるのかを私の部下である夫君から聞いたのは、式の数日前! というくらい、彼女が全てを手配していました。上海オフィスでも男性は楊揚君1名だけで、あとは全員女性。夫が作ったというお弁当を持参して、「今夜のご飯はなに?」と職場からチャットで夫に確認する姿はごく当たり前の日常です。
日本では女性の社会進出に賛否両論が存在しており、女性からも「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方が半数近くあります。
海外で感じること
私はどちらの価値観が正しい、という主張をしたいわけではありません。現実的に中小企業のレベルでいえば、応募者のうち、優秀な人から順に偏見なく並べていけば女性というケースが大半で、必然的に女性の比率が高まっています。日本では大企業の多くが男性をメインに採用し、特に管理職として配置していくと、中小企業に残される選択肢は多くはないのです。企業にとってきわめて大切な「考え、生み出す仕事」を女性に委ねること抜きにしては、私たちは成り立っていきません。実際、日本で女性をメインに会社をやっていますと、ヨーロッパや東南アジアと決して負けないレベルで、女性は優秀です。また、男性にいろいろなタイプがあるのと同じように、女性にもいろいろなタイプの人がいます。新しいことにどんどんチャレンジするのが得意な人から、根気強く、間違いなく正確にことをこなす人、アクティブで外交的な人から、一人でコツコツ取り組むのが向いている人など、さまざまです。女性比率が高い弊社のような会社ですと、男性が入ってくるととても歓迎されるのですが、よくよく聞いていると、喜んでいるのは「力仕事」「高いところの作業」「パソコンのトラブル」「クレームなどで男を出せといわれたとき」「システムなど論理的なやり方が必要なとき」と、かなり限られていて、男の私は密かに苦笑いしてしまいます。そんなことで、私と会社の男性陣はこのような仕事をたくさんやっているわけですが、逆にいうとそれ以外の部分では適正が乏しいともいえ、社会進出の是非を論じる以前に、絶対に必要なのが女性であり、ともに働くと相乗効果があるわけですから、女性にがんばってもらうのは当然のこととして捉えています。弊社でも子育て、介護など、いろいろな事情がある女性がたくさん活躍しており、彼女たちを支えるのが私の仕事でもあります。多様な働き方のフレームを試している途中経過が、今のプレマ株式会社です。どうぞ、これからもご支援よろしくお願いします。