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中川信男の多事争論

「多事争論」とは……福沢諭吉の言葉。 多数に飲み込まれない少数意見の存在が、 自由に生きるための唯一の道であることを示す

プレマ株式会社 代表取締役
ジェラティエーレ

中川信男 (なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。

シェアビジネスのほんとうの意義

投稿日:

「シェアビジネス」という言葉をご存じでしょうか。シェア(シェアリング)とは、分け与えることで、「この前、ためになる話を聞いたのでシェアしますね」というような言葉の使い方をします。このシェアという意味合いにビジネスという言葉が合わさるとシェアビジネスとなります。日経新聞の記事によれば、この意味は「空き部屋、たまにしか乗らない車、空き時間などの『遊休資産』を必要とする人に有効活用してもらい、お金を受け取る新たなビジネスの仕組み。インターネットを通じた借り手と貸し手のマッチングで急速に拡大」と説明されています。これらを取り込んだ経済圏のことをシェアエコノミーなどとも表現することもあります。私がこれらを最大活用してきた経験を紹介しつつ、日本の既得権益がこの世界的な潮流に逆らい続けていることによる機会損失も考えてみたいと思います。

不便を便利に変える

私は、プレマ株式会社の経営をするいっぽうで、自分の家や使っていない不動産を旅行者に貸し出すシェアサービスのひとつであるAirbnbのホスト(貸し出す側)を8年以上継続しています。Airbnbは世界中の人が気軽に一戸建てやシェアルームを探し出し、貸し借りすることのできるプラットフォームの大御所です。私が子連れで海外を旅行するときにホテルでは不便すぎた経験がこの貸出をスタートするきっかけになり、現在では京都、びわ湖、あわじ島、宮古島の4カ所の施設を運営しています。自分がホストをするだけではなく、たとえばイタリアのジェラートコンテストに行くときなどは広いキッチンや冷凍冷蔵庫が完備されている部屋をゲストとして借り、そこで仕込みを済ませて会場に向かうという利用者としての活用もし、とても助けられてきました。コンテストで作って余ったジェラートも、他の参加者はシンクに流して捨てるのですが、私は大切に持ち帰ってホストにプレゼントして、フードロスの削減にも役立てました。部屋は帰るときにピカピカにして、日本人はお行儀がよいという評判を残そうと努力もします。ホストからも、ゲストからも相互に評価をし合いますので、フェアな関係性が維持できます。「お客様は神様だからなにをしてもいい」と考えられてきた日本的なビジネスとはまったく違い、私にとっては対等な関係で必要なものを貸し借りできるこの仕組みをとても高く評価しています。さらに、自分の本業があってもネットを通じて管理の役割分担をすることができるので、チームメンバーも収入が確保でき、私はプレマの事業が物流費の急増で赤字を出してしまった数年間は給料をゼロにしても最低限の生活ができる収入源となりましたので、ほんとうに助かりました。コロナ禍にはゲストが得られない時期もありましたから、自分が泊まってリモートで仕事を続けたこともあります。さらに、シェアビジネスで得た知見を現在の飲食業のコンセプトにも活かしていますから、もう一石何鳥になっているかわからないほど助けられています。
 
さらに、ライドシェアと呼ばれる個人の自家用車を運転して目的地まで連れて行ってくれるサービスも最高です。私はかれこれ15年以上、靱帯骨化症という脊椎の難病を患っていますので、下半身が不自由になることがあります。この5年くらいは痛みで歩くこともままならず、最近は下肢の麻痺も生じているのですが、それでも海外に行けば目的地にライドシェアがあるので困りません。アプリで自分がいる場所に車を呼び出し、安全運転して目的地に連れて行ってくれますので、足が痛くてもなんとかなるのです。車も、運転している個人の私物ですから、汚い車はありませんし、運転も非常に穏やかで安心できます。私自身がこれらシェアビジネスの恩恵を最大限に享受してきたので、これこそ日本にもっと普及すればと願うのですが、残念なことに既得権益がガチガチに規制をかけようとするので、いっこうに大きな広がりを見せていません。私にとって日本は旅の自由度が低く、シェアリングが進んだ諸外国は移動するのも泊まるのも天国のようで、つい、身体が不自由でも海外に向かってしまう本質的な理由がここにあります。

冗談のような「シェア」もどき

日本でもタクシーが捕まりにくくなり、政府はやっと重い腰をあげてライドシェアを開始するというので、私もこの素晴らしさをいち早く体現する一人になりたいと、ライドシェアのドライバーの応募フォームから申し込みをしました。私は大型二種免許所持者ですから、私が京都で仕事の行き来の際にゲストをお運びすればみんなハッピーだと思ってのことです。すると、電話をかけてきたのはアプリの会社でしたが、面接はタクシー会社に履歴書を持って行ってください、というのです。さらに面接前に「中川さん、今から募集している時間帯のシフトを読み上げますので、希望するシフトを面接前に明確にしてください」とびっくりするような要求がありました。ライドシェアは自由な時間に、自分の居場所からすぐに参加できることがメリットなのですが、どうも政府が考えたライドシェアは「タクシー会社の格下乗務員」募集のようでした。結局、シェアともエコノミーともいえないこの茶番面接には行きませんでしたが、どこまでこの国は冗談が好きなのでしょう。自分の時間や遊休資産を活かすことをしないシェアという概念は成立せず、お役人の勝手な解釈で、似ても似つかぬ「ちゃんと国はがんばっています」ポーズに付き合わされるところでした。皆さん、海外に行けば多くの国はほんもののシェアビジネス天国です。安く、便利に、快適に、が簡単に手に入りますので、ぜひ上手にご活用ください。

愛を盛り付けたジェラート

「今年の夏は異常な暑さですね」と挨拶することが毎年になってしまい、なにが異常でないのか、すでにわからなくなってしまいましたね。おかげさまで、プレマルシェのジェラートやカカオレート、ダイナーも大忙しな毎日ですが、店舗に来ることのできる方はどうしても限られていますので、ジェラートの夏セットをご用意しています。お中元や夏のご挨拶の品に、ぜひプレマルシェを知らない方にも、この「愛の盛り付け」の本質を知っていただきたく思っています。

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シェアビジネスのほんとうの意義

- 中川信男の多事争論 - 2024年8月発刊 vol.203

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