僕が日々の診察でアドバイスしていることを、一言で表すと「どんな自分でも大丈夫、オッケー!」と思えるようになりましょう、自己肯定しましょう、ということです。この思考ができないと、イライラしたり、不安になったりします。さらにこじれると、生きていること自体が辛くなります。
小児科医を志望したとき、すべての子どもが幸せになってほしいと願い、少しでもそのお手伝いができる医者になろうと決意しました。子どもが幸せになるためには、その子自身が自己肯定できないと、当然ハッピーではありません。そのために、お母さん(お父さん)たちに、子どもをいっぱい抱っこして、大好きって言ってあげましょう、とアドバイスしていました。でもお母さんたちも、自分の親からいっぱい大好きと言ってもらった経験がないと、その言葉が素直に出てきません。親の自己肯定感がないと、どんなによい育児法でも効果がないことに気づいたのです。だから子どもの発達障害や不登校の相談のとき、「まずお母さん(お父さん)がハッピーになることが最優先です!」と伝えています。
お母さんが、幸せや自己肯定感を感じられるかは、おばあちゃんの子育てが大きく関わってきます。子どものときに、ほしかった方法で、親から愛情を受け取ることができているかがポイントです。愛情があっても、子どもがその愛情を受け取ることができないと、「私は愛されていなかった」と感じてしまいます。もちろんおばあちゃん自身が自己肯定できていないと、お母さんは必ず愛情不足を感じます。自己肯定の欠如は、次の世代に受け継がれます。いまここからその鎖を断ち切って、幸せの世界に入りましょう。
自己否定の正体
お母さんがみずからを肯定することが苦手な場合、その原因は親から受け取った表情や言葉にあります。子どもはスポンジのように親の言動を吸収します。親の評価が厳しいと、子どもは自分には価値がない、親の要求どおりにできない自分はだめだと感じてしまいます。親の愛情をもらうために、役に立つ子どもになるために、だめな自分を否定して、がんばり続けるのです。自分は(その親にとっては)悪い子だから、もっとがんばらなければいけない……と、自分で自分を評価して、基準をクリアしているか、いつも自分を見張っています。基準をクリアできない自分はダメな自分で、その基準を他人にも当てはめて、がんばっていない人はダメな人というレッテルを貼って、イライラすることもあります。
まずは自分を認める
自己肯定に根拠などありません。花がただ咲いている。太陽や月が存在するのと同じように、あなたが、ただそこにいるだけですばらしいのです。いや、すばらしいという表現さえしっくりとこないほど、それが当たり前に尊いことなのです。それを取り戻すために、当たり前に自分自身を認めることから始めましょう。自分の思考や感情に対して、どんなことを考えても「そう思うよね」と同意する練習をしてみましょう。「あいつムカつく」「またイライラしてしまった」「あーっ、自分はダメだなあ」など、どんな言葉や感情がわいても、「そう思うよね」とすべての思いに同意しましょう。自己否定の気持ちがあっても、まずは同意してみましょう。「そう思うのも仕方がないよね~」って、自分に言ってあげましょう。
これは、本当はお母さんに言ってもらいたかった言葉です。あなたはいままで十分に悩み、苦しんできました。大人になったいまなら、自分で自分を癒すことができます。いまこの瞬間から自分を100%認める人生に切り替えましょう。自分を評価する基準なんて本当はなかった、ということに気づけるようになります。