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インタビュー取材しました。

健やかな食生活のために精麦所ができること
株式会社勅使川原精麦所 代表取締役 勅使川原 唯男 氏 インタビュー

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雑穀、とくに大麦の食品機能性に注目が集まって久しいですが、そのなかでここ数年、熱視線を浴びているのが「もち麦」。もちもちしながらも粒が立って噛みごたえがあるため、麦ご飯にすれば風味高く、おまけに食物繊維も摂取できると評判です。最近プレマで販売が始まったのが、株式会社 勅使川原精麦所の「もち絹香」。その製作秘話を勅使川原社長に伺えば、健康的な毎日に貢献したいとの願いと、地元・栃木、そして農業の未来にかける思いがありました。

株式会社 勅使川原精麦所
代表取締役
勅使川原 唯男(てしがわら ただお)

1966(昭和41)年、栃木県安蘇郡田沼町(現在の佐野市)生まれ。明治大学卒業後、1998(平成10)年に玄米の精米・破砕米加工、および大麦の精麦加工・飼料加工を手掛ける、株式会社勅使川原精麦所の四代目社長に就任する。2005年に、「おらが納豆」を生産する、大豆工房おらがを立ち上げ、納豆の製造をスタート。また2017年からは、栃木県オリジナルのもち性大麦品種「もち絹香」の販売も手がける。地産地消のための「むすぶプロジェクト」も発足させるなど、栃木県の魅力発信のためにも奔走中。

高タンパクなビール大麦を育む肥沃な土壌が、
ここ佐野にあり

――勅使川原精麦所は、栃木県安蘇郡田沼町(現在の佐野市)で創業して、100年の歴史を誇ると伺っています。

当社は1920(大正9)年に、ヒエやアワ、米・麦を販売する雑穀商として創業しました。戦後はおもに精麦業を手がけるようになって、私で四代目(精麦所としては三代目)になります。

――精麦所では、どのような業務をおこなっているのでしょう?

まずは文字通り、精麦の仕事を担っています。大麦を精麦・粉砕・焙煎などの工程にかけ、麦ごはん用の大麦に加工したり、また味噌や麦焼酎の原料に変えたりして出荷します。

くわえて、わが社が位置する栃木県の県南エリアでは、とくにビール大麦の生産が盛んです。昔からビール大麦の生産量は栃木県が全国第1位で、100年間、不動のトップを誇っています。まさしく当社の100年の歴史は、ビール大麦と歩んだ1世紀と表現してもよく、長年にわたって大手ビールメーカーさんに麦芽原料のビール大麦を納めてきました。今も栃木県とビール醸造のつながりは深く、当社の周辺にはビール工場が点在しています。

――佐野市の隣町・群馬県の館林市は日清製粉の創業地であるために、ここ田沼地区も「小麦栽培が盛ん」との先入観がありました。

栃木県は、麦の耕作地の面積と生産量でも全国第4位で、小麦の栽培も盛んです。また、なぜそれほどまでに麦作に積極的なのかといえば、昔から栃木県、とくにここ県南の農家では、二毛作が当たり前だったからです。1年を通して気候が温暖であるために、二度も実りの秋を迎えることができます。

田植えが始まるのは、麦秋(麦の穂が実り、収穫期を迎えた初夏の頃)を終えた6月下旬頃。早くも9月には、収穫期を迎えます。当社は精米事業もおこなっていますから、新米が店頭を賑わす前のこの時期は、繁忙を極めます。

稲が刈り取られた後、麦の種まきが本格化するのが11月。ひと冬を超え、次第にその背丈が高くなっていきます。6月を迎える頃には、たわわに穂も実って、麦畑は一面の黄金色に。この時期の前後も、もちろん当社の繁忙期です。

また県南エリアで生産が盛んなビール大麦は、実は小麦より耕作が難しく、作付けする場所を選ぶといわれます。

ビールを醸造するうえで必須の大麦ですが、ビール酵母は、大麦のでんぷんをそのままアルコールには変えられません。「糖化」という工程を経て、でんぷんを糖分に変える工程が必要です。そのための必須要素である酵素を生み出すために、大麦を発芽させ「麦芽」にします。

この滋味深い麦芽を作るために、大麦は高タンパクで、粒が大きくなければなりません。したがって、ビール大麦を大量に生産できるここ県南エリアは、栄養価の高い農作物が育つ、肥沃な土壌を持っているともいえるのです。

国が1970年代から減反政策を進めたため、休田を活用してビール大麦を作る農家が増えました。あえて異なる作物を植えることで、土地が痩せないというメリットがあります。

また佐野市、小山市、栃木市などでは、学校給食で地元産大豆を使った納豆を提供します。私はこの大豆に可能性を感じ、15年前から、自社で納豆の生産も手がけるようになりました。

日本の食料自給率を上げたい
農業の未来のための納豆づくり

――精麦所が納豆を生産するというのは、一般的なのでしょうか?

いえ、全国を見ても、おそらく当社くらいです。いまでも「精麦所なのに、なぜ納豆を?」と、不思議がられることがあります。

たとえば、日本の標準的な朝食を思い浮かべてください。味噌汁の定番の具材といえば、油揚げや豆腐で、いずれも大豆製品です。もちろん、味噌も大豆からできていますし、醤油も然り。また朝から納豆をご飯にのせて掻き込む、という人もいるでしょう。

大豆は日本人の食卓と切っても切り離せない存在なのに、全体の消費量に対して、国産はわずか7%に過ぎません。「日本の農業の未来、また食の安全を考えれば、まずは自分が大好きな大豆の自給率を上げよう」。使命感に突き動かされ、国産大豆のみを使用した納豆「おらが納豆」の製造を開始しました。

私は約30年前から家業を手伝っていますが、その頃からずっと、国の減反政策に不満がありました。農家が休田すればするほど補助金が入る、この制度の矛盾。また2009(平成21)年に農地法が改正されるまで、農業への新規参入は禁止されていたため、耕作をせずともライバルは出現しなかったのです。

そして、たとえ加工用の米の需要があっても、主食用の米を栽培している農家は簡単に転作ができません。さまざまな規制に雁字搦めになるなかで、日本の農業の競争力が削がれていく。そんな状況に、どうしても我慢がなりませんでした。

とはいえ、いざ納豆を作ろうとなっても、当社には精麦の技術と人脈しかありません。「当たって砕けろ!」と、まずはインターネットで調べた全国納豆協同組合連合会に電話してみました。

たまたま受けた担当者が親切だったのか、近隣の小山市に住む発酵学博士を紹介してもらえました。納豆の生産設備会社の顧問も務めておられたので、この方に製造法を教わったのです。

――「発酵技術も兼ね備えた精麦所」。業界の最先端を走る企業です。

その謳い文句いいですね(笑)。とはいえ、そんな大袈裟な話ではないんです。

もともと、健康志向からくる雑穀ブームで、当社が扱う大麦などに注目が集まっていました。大麦を加えた麦ご飯は食物繊維、とくに水溶性のβグルカンが豊富です。また食物繊維自体も、玄米の約3倍を含んでいます。そして納豆の納豆菌は、腸内に存在する乳酸菌を活発化させます。大麦の食物繊維を納豆と一緒に摂取することで、さらに腸内環境は整います。

精麦所が納豆を手掛けることは、理に適っているのです。くわえて、ぬか漬けで善玉菌を摂取すれば、鬼に金棒。味噌汁を付ければ、立派な朝の献立です。

腸活のために、ヨーグルトやサプリメントを摂取する人がいますが、麦ご飯、納豆、ぬか漬け、味噌汁の朝食を毎日食べれば、十分ともいえるんです。ちなみに当社では、無農薬・有機栽培のぬか床も製造、販売しています。

――理想の朝食が、御社の商品だけで実現してしまうわけですね。

あとは味噌だけなのですが、これが難しくて。引き続き悪戦苦闘しながら、開発を試みています。

納豆は製造を開始した直後に、日光金谷ホテルさんの朝食での取り扱いが決まって、県内での知名度が高まりました。栃木県の宿泊施設への卸、くわえて小売も、いまでは堅調です。これも地元農家さんが、休田での大豆栽培にご協力くださった賜物といえます。

――栃木のホテルの朝食で、地元産大豆の納豆がいただける。県外からの来訪客にも、嬉しいおもてなしですね。

「おらが納豆」のように、地元の農業の可能性を集め、栃木の新たな名物を生み出したい、と以前から考えていました。100者以上の農家さんと、100年を歩んできた当社の思いを「むすぶプロジェクト」と命名し、いま推進しています。

たとえばワイナリーのブドウの搾かすを牛の飼料にしたり、逆に牛の堆肥をブドウ畑の肥料にしたり。この無駄のない循環型プロジェクトにも、当社の精麦、また発酵の技術が生かされています。

地元一体となって送り出した「もち絹香」で、
より麦飯が身近に

そして、最近「むすぶプロジェクト」が生み出したヒット商品が、「もち絹香」。JA佐野、地元農家さんと連携しながら、開発・普及に当たって、その取り組みが見事に結実しました。

β-グルカンを豊富に含んだ大麦の一種である、もち麦がブームになって久しいですが、その少し前から、私もこの穀物に大きな可能性を感じていました。

麦ご飯が苦手という人には、麦独特の臭いに馴染めないという傾向があります。ところが、「もち絹香」にはその匂いがほとんどありません。また〝もち性〟の大麦なので、白米に混ぜて炊くことで、非常に弾力ある食感が生まれます。もちもち食感は冷めても残るため、時間を経てもおいしいんです。変色も、ほとんどありません。また噛み締めるたび、大麦特有のプチプチした舌ざわりが伝わって、食欲が掻き立てられます。

私は4年前、宇都宮の農業試験場で、このもち麦を見つけたとき、宝の原石を見つけた気がしました。早速、佐野に持ち帰って、試しに農家さんに作付けしてもらい、大きな手ごたえを得ます。

しかし野望はあれども、すぐ実現できないのが農業の世界。繰り返しになりますが、昔から、栃木県の県内エリアの名産といえばビール麦です。これを耕作していれば、農家さんは安定した収入を得ることができます。

また新たな品種を作付けしても、流通システム、JAさんの協力は不可欠です。「もち絹香」のブランドを大きく育てるために、あえて難しい道を一緒に歩んでほしい。そうお願いするしかありません。

話し合いを積み重ねるなかで、農家さんもJAさんも、私と同じ思いであることがわかりました。昔ながらのビール麦の栽培もいいけれど、新たな挑戦もしたい。郷土・佐野のために尽力しようとの思いを共有できました。以降、地元の農家さんが真心を込めて育てた「もち絹香」をJA経由で仕入れ、当社のブランド名で加工、出荷しています。

「もち絹香」はおいしさだけでなく、手軽さも兼ね備えています。まずは、100gずつ包装されていること。2合の白米に1袋を混ぜ、炊飯器の3合ラインまで水を入れてボタンを押すだけで、香り高く、もっちりと炊き上がります。ぜひ気軽に、麦ご飯の食物繊維を日常の食事に取り入れてください。もちろん、納豆、ぬか漬け、味噌汁もお忘れなく。朝食の定番にしていただきたいのです。

――「もち絹香」が誕生して、勅使川原社長の理想の朝食が、家庭で手軽に楽しめるようになりましたね。

あとは自家製味噌だけです。生きた味噌、〝生味噌〟って、安定して作るのが本当に難しいんですよね。そういえばプレマさんでは、「中川信男の手前みそ」が人気商品だそうで。今度、中川社長に、仕込みのコツを聞きに伺いますね(笑)。

麦のにおいが控えめで、時間が経っても変色しにくい国産もち麦。米2合に対して1袋×14回分の小分けパッケージ入りなので、炊飯時に封を切って入れるだけ。忙しいときも便利。



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健やかな食生活のために精麦所ができること株式会社勅使川原精麦所 代表取締役 勅使川原 唯男 氏 インタビュー

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