沖縄の離島・宮古島でも、コンビニやホームセンター、通販もあり、ほしいものはなんでも簡単に手に入るようになりました。しかし、それは最近の話でそれまでは生活に必要な物資はなるべく島内で調達していました。民間機の初就航が1955年なので、今の便利さを当たり前と思うことのほうがむしろ不自然に感じられます。
みんなを繋ぐ縄
今号ではプライベートガイドでご案内する「縄綯い体験」をご紹介します。案内してくださるのは、沖縄県内の小学校長を歴任してこられた国仲富美男先生で、島の文化の価値を見直すさまざまな活動をされています。
宮古島ではヤシ科のクバの葉を使った傘や扇子、水汲みの手桶、雨合羽、パイナップルに似た実をつける亜熱帯植物のアダンの葉を使った草履や籠、ススキのホウキなど、身の回りにある植物を使ってさまざまな民具を作っていました。なかでも植物の繊維を綯って作る縄は、「桶や籠をぶら下げる」「サトウキビや家の柱を縛る」「家畜や船をつなぐ」など、さまざまな用途に活用されていました。
初めて縄綯いの様子を見たときは、両手の間からスルスルと撚り上げられて出てくるピッチが短く揃った美しい縄目に驚愕しました。所作があまりに自然なので簡単なのかと思いきや、真似してみようとすると「あれれ?」の連続です。丁寧な説明を受けて、先生の魔法の手の動作を繰り返し見て、理解したつもりになっても、今度は思い通りに手が動かず、植物の繊維も思った通りにまとまってくれません。試しに2枚のティッシュペーパーを撚り合わせて綯った縄が簡単には引きちぎれないことにも仰天しました。
今も祭祀の際にはススキの縄が綯われ、学校が閉校になるまでは、おじいやおばあが大活躍する縄綯い競争が運動会を賑わわせていたそうです。
必要は発明の母と言われるように、不足を補おうとする人の努力が現在の便利な世の中を作ってきました。体験を通じて先人の生活の知恵を探るところに、今なお大きな気づきのチャンスがあると思います。
(写真左)まるで魔法のように植物の葉が縄になっていく (写真右)2重螺旋の縄綯いの仕組みをやさしく解説してくださる国仲先生