一般的なアメリカ人の食生活 (Standard American Diet:SAD)では野菜や果物の摂取量が不足しており、特に若年層ではその傾向が顕著です。これはアメリカに暮らす人たちのことだと思っておられる方がいらっしゃいますが、そうではありません。健康的と称賛されていた日本人の食生活は過去の話で、野菜の摂取量を見るとアメリカが日本を上回っています。野菜不足が警告されているアメリカ人以上に平均的な日本人の野菜不足は深刻です。
私は大人だけでなく乳幼児から成長期の子ども、さらにはアスリートまでPBWF(プラントベースホールフード:植物性の食材をなるべく精製加工することなく食べる)で十分な栄養を摂れるとお伝えしています。成長期に肉や魚、卵、乳製品を食べない食事では栄養が不足するという意見がありますが、きちんと配慮されたPBWFの食事を摂ればタンパク質を始めとするすべての栄養が不足することはなく、ビタミン、ミネラル、ファイトケミカル、食物繊維も効率よく摂取できます。
前号では、エネルギーに変換しやすく活動にすぐに使える炭水化物を、極力精製しない状態の穀物(全粒粉で作ったパンや麺、そして玄米)と豆類、イモ類、果物、野菜から摂取することが重要であると書きました。炭水化物は活動エネルギーの源ですが、精製されつくした粉で作ったパンや麺、白米は、ビタミン、ミネラル、ファイトケミカル、食物繊維など重要な栄養を取り去った状態となっています。炭水化物は精製しない状態で摂ることがエネルギーと同時に重要な栄養を得る秘訣です。
炭水化物をホールフードで食べることができたら、三大栄養素の残りの二つ、脂質とタンパク質について考えます。
脂質はカロリー源として、そして成長する脳組織に特に重要な細胞膜の構成要素として必須です。成人は脂質を全体の摂取カロリーの10〜15%に留めるべきですが、成長期の1〜3歳までは35〜40%、4〜18歳は25%を脂質で摂るようにします。目安量については前述の通りですが、質についても配慮が必要です。具体的には体内で重要な働きをするオメガ3脂肪酸が摂れるチアシードや胡桃、亜麻仁、麻の実などの食材を意識的に摂り入れるようにします。その他脂質を多く含む良質な食品としてアボカドやナッツ、種子類、オリーブなどを毎食食べるようにします。大人の場合は油を使用しないプラントベースホールフードの食事が有益で、特にすでに病気に罹患している場合にはオイルフリーの食事が治癒に直結しますが、成長期の子どもの場合は調理に少量の油を使用してもよく、その場合は亜麻仁オイルや胡桃オイルなどオメガ3が多い良質の油を選んで使うようにします。
タンパク質は、骨や筋肉、皮膚、血液を作り、修復し、維持するために使われる重要な栄養素で酵素やホルモンの構成要素でもあります。成長期の子どもたちは大人よりも多くのタンパク質を必要としますが、毎回の食事にタンパク質源を多く含む豆類(大豆製品である豆腐や豆腐加工品、納豆など)、ナッツ、種子類、全粒穀物、果物などを組み合わせることによって満腹感を得ながら必要なタンパク質を摂ることができます。PBWFとタンパク質については機会があるごとに触れますので今後も追加で説明します。
子どもは成長と発達に多くのエネルギーが必要です。しかし、胃が小さく、一度に多くの食事が摂れません。子どもにとって間食は嗜好品ではなく活動と集中力を持続させるための栄養源ですから、一日三度の食事と間食の機会ごとに三大栄養素と微量栄養素をバランスよく摂取できるように気を配ります。ナッツバターやアボカドなどの複合炭水化物と脂質に富み、カロリー密度が高い食品を毎食食べさせることが重要です。