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カンボジア地雷除去支援

江角泰 (えずみ たい)

NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。

【Vol.25】偏見や差別を乗り越えて『希望』を見出す

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 前回に引き続き、テラ・ルネッサンスで2009年4月から雇用している女性のスタッフを紹介します。名前は、ヨート・イェト、1970年5月15日生まれの39歳です。家は、サムリット・ラウ(前号で紹介したテラ・ルネッサンスのもう一人の女性スタッフ)と同じ村にあります。彼女は1985年5月26日、14歳の時に地雷事故に遭いました。午前9時頃、数人の兵士たちと姉と共に田んぼの中を歩いているとき、地雷を踏みました。地雷のタイプは中国製の72Aという対人地雷で、小さくて緑色をしていることから、カンボジアの人は「カエル地雷」と呼んでいます。地雷を踏んだときは、彼女の姉以外、誰も助けに来てくれませんでした。兵士たちは怖がって助けようとしなかったのです。そのため、しばらく田んぼの中にいなければなりませんでした。しばらくしてから数名の親戚が助けに来てくれ、バヴェル郡の病院に運ばれました。その病院では10日間ほど滞在しましたが、薬がなくなったため、その後バッタンバンにある病院へ移りました。治療が終わった後は、赤十字国際委員会が運営するリハビリテーションセンターで義足をもらい、つけています。

 彼女の家の生活はとても厳しく、30m×40mの家の土地があるだけです。食べ物も十分にないほど貧しい生活です。現在は高齢の母親と2人の子ども、そして姉の家族と一緒に生活しています。15歳になる上の女の子は養子で、イェトは14歳のときに地雷を踏んで左足を失ったので、一生結婚できないと思っていたため、村人の勧めに従って、その女の子を引き取ることにしました。その子の父親は、母親に対して家庭内暴力(DV)をひどくふるったため、母親はタイへ逃げてしまい誰も育てられなくなった子でした。養子にしたときは、ひどい下痢を繰り返していたた
め、村人はエイズ感染を疑っていたようですが、彼女が育て始めてから下痢は治り、元気に育ちました。村人たちが、二人が本当の親子ではないことをその子に話しても、その子は今でもイェトを本当の母親だと強く信じているそうです。

 イェトは、2度結婚し、2度とも離婚しました。1人目の夫と分かれた理由は、地雷の被害者だったことがあるようです。2人目は、イェトと結婚する前にすでにシェムリアップ(アンコール遺跡群で有名な町)に妻子がいましたが、彼女はそのことを知らずに結婚しました。夫は数年前に「また戻ってくる」と言い残してシェムリアップへ行ったきり帰ってきませんでした。結婚する前は、二回ともどんな男なのか分からなかったといいます。

 テラ・ルネッサンスとの出会いは、2009年の2月。ラウと一緒に赤十字のリハビリテーションセンターで義足を作り替えてもらっているときに現地スタッフと会い、テラ・ルネッサンスの事務所にやって来ました。最初は、現地スタッフを人身売買のブローカーか何かではないかと疑っていたようですが、事務所でじっくり話をして、テラ・ルネッサンスの活動を知ってもらうことができました。しっかりとした教育は受けていませんが、ラウに比べると当初から読み書きも計算もできました。ただ、子どもが2人いることと、村の工場で昼食を作る仕事に就いていたため、雇用は難しいと考えていました。しかし、子ども達は一緒に生活している母親やお姉さんの家族が面倒を見るし、工場での仕事はすぐに辞められるので一緒に働きたいというので、雇用を決めました。

 イェトは、地雷生存者であることを忘れさせるほど、義足をはめて長距離を歩き、力仕事もこなします。彼女を見ていると、地雷生存者に義足を提供することの重要さを改めて知ることになります。義足があることでどれだけ人の持つ可能性が広がるか一目瞭然なのです。ただ、彼女の場合は、運よく義足をはめられましたが、地雷生存者のなかには、足の付け根から切断しなければならなかったり、両足を吹き飛ばされたりして義足をはめられない人や、ラウのように切断部位が義足と擦れて、長時間歩くと痛みが出る人などもいます。また地雷生存者に対する社会的な偏見や差別もあります。イェトのように義足をはめて、一人前以上のことができたとしても、足がないというだけで就職できないことがほとんどなのです。イェトによれば、やはり障害者は差別や偏見の目で見られることが多く、特にカンボジアの女性は、それが恥ずかしくて社会に出て働く勇気を失うこともあるといいます。そんな差別や偏見をも吹き飛ばして元気に働いてくれているラウとイェトの2人が、地雷生存者を含むすべての障害を持つ人々にとって、『自分も彼女たちのようになれる』という希望を与える存在になって欲しいと願っています。

江角泰(えずみ たい)

江角泰(えずみ たい)氏
NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス中学校建設プロジェクトも担当中。

- カンボジア地雷除去支援 - 2009年9月発刊 Vol.25

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