台所を整理したら、「賞味期限」切れのカップ麺が出てきました。冷蔵庫には「消費期限」を過ぎた牛乳が。「賞味期限」と「消費期限」って同じ意味ですか? (大阪市・片づけられないマン)
A.あくまで参考、頼りすぎず最終判断はご自分で
答える人 プレマ株式会社 お客様コンサルティングセクション 岸江 治次
野菜などの生鮮食品を除いて、日本で流通する加工食品には、法律で期限表示(消費期限・賞味期限)が義務づけられています。たとえばコンビニで販売される弁当やサンドイッチなどの惣菜、パンや牛乳などには消費期限の記載があります。これは袋や容器を開けないまま、示された方法を守って保存した場合に、この「年月日」までは安全に食べられるという意味です。いたみやすい食品に表示されるため、もし期限を過ぎたら、食べないほうが賢明です。
一方の賞味期限は、袋や容器を開けないまま、記載された方法を守って保存した場合に、この「年月日」まで、「品質が変わらずにおいしく食べられること」を示します。スナック菓子やカップ麺など、いたみにくい食品に表示されます。3ヶ月以上保存できるなら「年月」しか書かれていない場合も。あくまで「おいしくいただける期限」であり、日付を過ぎたら食べられないわけではないのです。この消費期限と賞味期限の違いを理解している人は意外と少なく、賞味期限が過ぎたからといって、たとえばレトルトカレーのような加工食品を捨てる人が結構います。
そもそも加工食品も、生き物の命から成り立っています。その寿命は千差万別で、本来は一律に決められません。肉は精肉店、魚は鮮魚店と、人々が商店で買い物した時代には、店主が食材ごとをみて「これはいつまで」と教えてくれました。しかし今は量販店や通販での食品購入が主流、期限を表示することが必要になってきます。
ただすべての加工食品に期限表示があると、人々が思考停止するのも事実です。賞味期限を過ぎているだけなのに、食材の色やにおい、味をみることもなく捨ててしまう。国内のフードロスは年間2000万トン以上。日本の食品生産量の約6分の1は食べられることもなく、廃棄されます。世界の人口の約9分の1が今も飢えに苦しんでいるのに、この状況はありえない。いつかバチがあたって日本も食糧難になれば、人ごとでは済まされないのです。
またもちろん賛否両論はありますが、日本のメーカーは、賞味期限を長く設定するべく、加工食品に食品添加物を使っています。菌が繁殖して食品がいたまないよう、防腐剤や防カビ剤、殺菌剤を添加して、保存性を高めているのです。酸化して風味が落ちやすいのが油ですが、油分を含んだ食品には酸化防止剤が使われることが多く、商品の劣化が防がれています。食物がもつ天然の色素は、空気や太陽の紫外線、電灯の光に触れることで変容しますが、着色料を使えば、赤なら赤、緑なら緑と、長い期間鮮やかな色合いをキープできます。また製造技術もレベルアップして、無菌室での食品加工も当たり前に。これを石油プラスチック容器で密封すれば、消費者が封を開けるまで、かなりの期間、品質が保てます。しかし、たとえば「ピンホール」といって、作業過程でかすかに穴の開いたレトルト食品も散見され、この場合、たとえ賞味期限内でもいたんでいることがあり、注意が必要です。
期限表示が法制化されるより前の時代、人間は五感で食材の日持ちを判断していました。目で色をみて、においを嗅いで、味見をして、です。自分でその見当がつけば、極端に期限を気にしたり、ピンホール商品を恐れることもありません。賞味期限だけに頼らず、五感で日持ちを判断できるよう、食材をみる目を養うとよいでしょう。