高校生の娘は生理期間中が毎月つらそうで頭痛やめまいもあるようです。普段からなにかできることはあるでしょうか。(年末年始に食べすぎて胃もたれした40代主婦)
答える人 プレマ株式会社 お客様コンサルティングセクション 岸江 治次
日々の食生活を見直すことが予防につながる
「貧血」というと、「血が足りなくなる」「血が薄くなる」といった状態を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし厳密にいうと少し違い、貧血とは、血液中の赤血球が体の末端まで十分な酸素を運ばない状態で、これにより体調不良が引き起こされることをいいます。
血液は血漿と白血球、血小板、赤血球に分類されます。白血球は体内に侵入した病原体などの異物を攻撃し排除する免疫の役割、血小板は血を凝固する役割、赤血球は酸素を運ぶ役割を担っています。体は、空気中の酸素を肺から取り入れ、酸素が体中に運ばれることで健康を保っています。血液中の赤血球の中にある「ヘモグロビン」に含まれる鉄が酸素分子と結合することで酸素が運ばれるというメカニズムです。鉄は赤血球の生成と機能にも重要な役割を果たすため、酸素を運ぶには鉄が必須であり、鉄が不足すると貧血になります。
体内には3~4gの鉄があり、そのうち70%程度が機能鉄として主に酸素を運ぶ役割を担い、残りの30%は貯蔵鉄として肝臓、脾臓、骨髄などに蓄えられ、機能鉄が不足した際に使われます。貧血は、造血細胞の異常といった病気に起因することもありますが、主な原因は赤血球の不足です。貧血になると、頭痛、目まい、耳鳴り、疲労感、脱力感、顔色の悪化や爪の変形、狭心症などの症状が現れます。鉄が大きく不足する原因としては子宮筋腫など体内での炎症による出血や女性の月経などが挙げられます。病的に貧血と診断されると鉄剤が処方されますが、鉄剤を摂取してもすぐに鉄が補給されるわけではなく、多くの場合に副作用が伴うなど課題も多いです。さらに、病的な要因がなくても鉄は代謝によって毎日1g程度は体内から失われるうえに体内では生成できないので、食事から日々摂取する必要があります。
1日の鉄の推奨摂取量は、男性は1日7.5mg、女性は10mg、月経が始まる10歳~12歳は12mg以上です。平均的な食事をした場合、1日に20mgくらいの鉄分が摂れるとされますが、すべてを吸収できるわけではありません。動物性食品では肉、魚、卵などが鉄分(ヘム鉄)を多く含み、吸収率が高いといわれています。植物性食品では海藻、大豆などが良い鉄分源ですが、植物性の鉄分(非ヘム鉄)は吸収が劣ります。吸収率を上げるにはビタミンCやクエン酸をいっしょに摂取するのが有効です。
昔は海藻や大豆などをバランスよく食べる習慣があり、自然と鉄分が摂れていましたが、現代は食生活が欧米化したことで鉄分不足になりがちです。また、昔はひじきを鉄釜で炊くことで鉄分がより豊富に含まれていたのが、最近ではステンレスや表面が加工された鍋を使うようになって鉄分が減少するなど、料理の際の鉄鍋の使用減少も鉄分不足の一因とされています。
日本では食事による鉄分不足の要因がさまざまあるものの、政府による貧血対策があまりおこなわれていないのが現状です。ゆえに個々人が自己管理をする必要があります。貧血予防の鍵は、意識的に鉄分を摂取すること。鉄分が多い食品を吸収率も意識してバランスよく食べるようにしましょう。また、急激に体が冷えると毛細血管が切れて出血して貧血を起こすこともあります。身体を冷やすといわれている食品の食べすぎにも気をつけましょう。