引き続きグルテンフリーの問題についてお伝えします。
小麦や麦は、米のように「粒」そのままではなく「粉」にして、水や卵などさまざまな原料と混ぜ形状を自在に変えることができます。
ケーキやパン、焼き菓子、麺などに加工し、古来、食卓を豊かにしてきました。その小麦がなぜ今、問題視されるようになったのでしょう。
イタリアが国内で使用する小麦は、外国に輸出するパスタなども含めると国内産でまかなえる量は到底栽培できないことはお察しいただけると思います。
イタリアでは、そのほとんどを輸入に頼っている現状があります。日本でもうどんやパンなどの小麦を輸入に大きく頼っていることと同じです。
グルテンフリーの問題は単に小麦の成分(グルテン)の問題だけではなく、輸入されたものを使用することを含め、さまざまな原因が複合的に絡まって起きており、小麦の栽培の由来、保存方法、輸送方法、製粉を含めた加工方法、それを輸送する方法など、一つひとつのプロセスがどのように処理されているかを見れば原因が見えてきます。
高温乾燥による変質
その一つ加工工程の「熱」についてパスタの加工を通して想像していただきたいと思います。
パスタは原料である硬質小麦に水を加え12%前後まで水分をしぼり乾燥させてできあがります。
含有成分である炭水化物、タンパク質(グルテン含む)、脂質、微量成分は、小麦粒を製粉し捏ね、成型、乾燥、それぞれの工程で熱によるリスクがあることを、まずはご理解ください。
この熱がパスタや小麦の質を大きく左右し味や風味、食感に関わってくるのです。
具体的には製粉時の摩擦熱の有無と成型後の乾燥工程の熱の温度です。
高すぎると小麦の成分が「変質」し消化が困難になり、内臓にかける負担のリスクを高めることになります。
理想は天日乾燥の乾麺ですが、パスタに関しては天日乾燥のパスタは保存性が悪く劣化しやすく、ある程度の温度でしっかり乾燥し袋詰めすると保存が安定します。
適正な温度でゆっくりじっくり低温乾燥されたパスタは食感がもちもちで消化が良く、食後の胃への負担が少なく粉の味がしっかりし甘味がありおいしいです。
高い温度で早く乾燥させたものは低温乾燥のものと比べると歯ごたえが固く、もちもちではなくシコシコの食感、そして胃に留まる時間も長く食後感が全く変わります。
こってりのソースと和えて食べることの多いイタリア人さえ、この低温乾燥と高温乾燥の食感と食後感の違いがわかる人もそういないのが現状で、高温で短時間で乾燥させたパスタがスーパーマーケットのパスタ売り場の主流です。
高温による成分の変質はグルテンに限らず主成分である炭水化物にさえも影響します。微量成分にも及ぼすのは小麦の特性を知り小麦の身になって考えればわかります。
低温乾燥で加工されたパスタのおいしさは食べ比べればはっきりとわかり、ラベルの表記ではなく、パスタの色合いや実際に茹でたゆで汁の濁り方などでだれでも簡単に見分けることができます。
まずは低温乾燥のパスタがどのように茹で上がるか、食べた時の食感、そして食後感を実際に味わい感じ、レッテルや人のいうことに惑わされずに自身でチョイスができる舌と目を持つことが大事と思います。
次回はもう一つの小麦は悪と言われる原因、小麦製品に介在する薬品についてお伝えします。