子どものためのPBWF(プラントベースホールフード:植物性の食材をなるべく精製加工することなく食べる)の食生活について連載中ですが、今回は昨年不慮の死を遂げられた松田麻美子先生を偲んで先生の功績をお伝えします。
ナチュラルハイジーンとは19世紀初めにアメリカの医師たちによって学問的に系統づけられた「生命の法則」に従って生きる重要性を説く健康理論です。人体を正常な状態に維持するためには、空気、水、食事、運動習慣、睡眠、日光、ストレスマネージメントの7大要素が大切とされ、その考え方は栄養学者コリン・キャンベル博士が研究から見出したPBWFの食事と共通します。松田先生はこの理論を啓蒙するため書籍の執筆や講演活動に尽力され、多くの方々を健康に導かれました。
2023年11月21日、松田先生は来日中の東京のホテルで不慮の死を遂げられました。11月19日に京都大学で講演をおこなったわずか2日後のことです。講演のあとCHOICEでおこなわれた懇親会ではファンの方たちに囲まれ終始上機嫌でいらしたことが印象に残っています。講演会場からCHOICEへの移動中にcafé planetにも立ち寄っていただき、私が運営する2つのお店に来ていただくことが叶って嬉しい反面、CHOICEの食事が先生に及第点をいただけるか内心ドキドキしていましたが、たっぷりの野菜と十割蕎麦を組み合わせたサラダ蕎麦を美味しいと言いながら召し上がっていただくことができホッとしました。講演で「日本から送っていただいた漬物を食べたら塩辛い鼻水が大量に出ました。余分な塩分を体が追い出したのでしょう」と述べられ、添加物や農薬はもちろん、精製された食品にも敏感に反応するともおっしゃっていました。30年以上ナチュラルハイジーンの食生活を実践された体には異物を排出する機能が備わっていたのだと思います。
私が食の安全と栄養について学び始めたころ、コリン・キャンベル博士の『THE CHINA STUDY』に出合いました。本には史上最大規模の疫学調査とそれを裏付ける実験室での実験でPBWFが健康に最もよい食べ方であることが証明されていると書かれており、アメリカで大変な話題となっていました。その内容を日本人に知ってもらいたいと日本語に翻訳されたのが松田先生です。同時期に読んだ先生の著書『女性のためのナチュラルハイジーン』では、アメリカの生活に憧れ移り住み、乳製品や卵、油の多いもの、甘いもの、コーヒーなど典型的な欧米型の食事を好んだ結果、子宮筋腫を生じ、34歳で子宮を摘出、手術のあと5年もの長期にわたり酷い若年性更年期障害に苦しんだ経験を告白されています。
私とは2014年にジョン・マクドゥーガル先生が開かれた学会会場でコリン・キャンベル博士にサインを求める列に並んだ際にお会いしたのが最初です。そのときに「プラントリシャン・プロジェクト」というPBWFの食生活を科学的な裏付けを示しながら啓蒙する医療関係者の会が発足したことを教えていただき、このことは私の後の活動に重要な影響を及ぼしました。10年後にあたる今年、「プラントリシャン・プロジェクト」日本支部となる「NPOプラントリシャンJAPAN」を発足させることになったからです。先生の最後の講演ではこのことをアナウンスいただいたうえ、壇上に私を招いて激励してくださいました。
4月におこなわれる「松田麻美子先生を偲ぶ会」は最後の翻訳の仕事となった『チャイナ・スタディー最新改訂増補版』の出版元であり日本語版『WHOLE』出版でもお世話になった㈱ユサブル様と、食品を通じてナチュラルハイジーンの普及に尽力される㈱ナッシェル様の共催でおこなわれます。松田麻美子先生の御冥福をお祈りしながら本を手にとってみてはいかがでしょうか。