この連載でご紹介してきた手法は、ネガティブな感情を解消するだけでなく、ポジティブな感情を増幅する効果があります。
不快な感情にとらわれているときには、それを解放することがまず必要ですが、習慣化するためにいつもそうしなければならないわけではありません。
快適な感情に注意を向ける余裕があるときには、それを解放することで、もっと引き出すことができるのです。
否定的な感情は凝縮して固まった状態であるために不快に感じられます。
解放すると、その塊が溶け、拡散して軽い状態になるため、不快感が消えたように感じられるわけです。
動作に喩えると、不快な感情が続いているときは、それを心の中で握り締めています。
力を緩めて手を開くことが手放し・解放です。
肯定的な感情にはすでに広がりがあるため心地よく感じられます。
そして、これを解放するとさらに広がるのです。
頭で考えると、「解放すると無くなってしまうから、ポジティブな感情は保持したい」と思うかもしれませんが、実際に試してみると、無くなることはなく、むしろ増えたり、拡大したり、もっと内側から流れ出てくるようになるのを体感するでしょう。
セドナメソッドの基本手順では、感情を認めて手放すという流れでおこないますが、肯定的な感情を手放すとは、解き放つ・広がっていくままにするというニュアンスになります。
それでも難しく感じるなら、認めることや迎え入れることだけでも同様の効果があります。
認めるとは、この瞬間の心の中にいくらかのポジティブな感情があることに注目し再認識することです。
迎え入れるとは、それが心の中に浮かび上がってきたり広がってくるのをそのまま味わってみたりすることです。
次の記述を読み、その感情があったときを思い出したり、今この瞬間の心の中に見つけられたら認めて迎え入れる時間をとってみてください。
セドナメソッドではポジティブな感情は大きく分けて勇気・受容・平安と三種類あるという見方をします。
勇気とは意欲や前向きな気持ちです。
まだ慣れていないこと、充分にできるとは思えないことでも、興味や意欲があればトライしますよね。
この文章を読みながら心の中で試そうとしているなら、いくらかの勇気があるということです。
受容とは受け入れることが自然にできている状態であり、楽しい、優しい、温かい、快い、などの気持ちです。
きれいな景色を眺めているとき、かわいいと思う動植物を見ているとき、美味しい食事を楽しんでいるときなどにも、このような感情があります。
平安とは安らぎ、落ち着き、穏やかさ、冷静さがある状態です。
これを読んでいる今この瞬間にも、いくらかの落ち着きがありますね。
入浴や就寝のときにリラックスする感覚もこれにあたります。
ネガティブな感情(悲しみ、恐れ、怒りなど)とポジティブな感情を交互に認めることにより、前者が後者に包まれ溶けていきます。
これも解放の手順のひとつです。
どの感情も解放する習慣を続けると、本当の自分は、あらゆる感情や思考を許容しながら、それらすべてを超えた存在であることを自覚するようになります。
意識の本質は、何にもとらわれていない自由なのです。
一年間にわたり担当させていただいた連載は今回で終了となります。
これまでお読みくださりありがとうございました。
今後も書籍や講座などがお役に立てば幸いです。