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法の舞台/舞台の法

日常のなかにある法律問題踊る弁護士の活動報告

弁護士/舞踏家

和田 浩 (わだ ひろし)

1977 年新潟県柏崎市生まれ。京都大学総合人間学部卒業。弁護士として、さまざまな分野の事件に取り組んでいる。なかでも、障害者の権利に関する案件に多く携わっている。他方、舞踏家として舞台活動もおこなっている。福祉、芸術、司法の連携について、あれこれ考えている。
縁(えにし)法律事務所 
京都市中京区新椹木町通二条上る角倉町215
075-746-5482

祖父母と孫の法律論

投稿日:

今月は、先月に引き続き、家族法の問題について取り上げてみたいと思います。今回取り上げるのは、「祖父母は、別居している孫との面会交流を求めることができるのか」という問題です。

祖父母と孫の交流の意味

一般に、高齢の方にとって、孫との交流は、大切な生きがいになり得ると思われます。逆に幼い孫のほうから考えても、人生経験の豊富な祖父母との交流を通じて知識や知恵を得られるなど、有意義な点が多いと思われます。したがって、一般的には、祖父母と孫の交流には大きな意味があると思います。

他方、祖父母が孫に対して虐待に及ぶ可能性がある場合などには、交流を避けるべき場合が多いでしょう。また、祖父母と父母の関係が良好でない場合には、祖父母との面会交流により孫が葛藤状況に置かれ、強いストレスに苦しめられる可能性がありますので、そのような場合にも、慎重に検討すべきでしょう。

法律上の根拠

ところで、法律は、祖父母と孫の面会交流について、どのように規定している(あるいは、していない)のでしょうか。

まず、父母と子の面会交流については、民法766条に規定があります。長くなるので引用は避けますが、この規定を根拠に、父と母が離婚をした場合や別居をした場合、子と別居するほうの親は、子と同居するほうの親に対して、子との面会交流を求めることができます。具体的には、親同士で協議をすることもできますし(これは法律の規定がなくても可能です)、家庭裁判所に対して面会交流調停や審判を申し立てることも可能です。

ところで、調停というのは、家庭裁判所において、調停委員が関与する形で、双方が話合いをする手続です。話合いの結果、双方が納得できる結論に至れば調停が成立しますが、合意できなければ調停が不成立となり、面会交流調停の場合、審判という手続に移行するのが原則です。

審判では、家庭裁判所が何らかの決定をおこないます。親と子の面会交流に関しては、虐待などがないケースでは、定期的な面会交流を認める決定がなされることが多いです。

最高裁判所の決定

では、祖父母と孫の面会交流についてはどうでしょう。
先ほどご紹介した民法766条は、父母と子の面会交流を規定するにとどまり、祖父母と孫の面会交流については直接的に規定していません。また、ほかに、祖父母と孫の面会交流について定める規定も存在しません。

そのため、祖父母が孫との面会交流を求めて、家庭裁判所に面会交流調停や審判を申し立てることの可否につき、古くから議論がありました。裁判例も割れており、明文の規定はないものの、祖父母と孫の面会交流を認めた裁判例もありました。

そうしたなか、令和3年3月29日、最高裁判所は、祖父母は孫との面会交流を求める審判を申し立てることはできないという判断を示しました。そうすると、面会交流調停を申し立てることもできなくなります。したがって、祖父母が孫と面会交流をしたいと考えても、孫の父母が反対している限り、面会交流を実現することは難しいという結論になります。

立法論

この問題に関する海外の例を見ると、例えばフランスには、祖父母と孫の面会交流を保障する法律の規定が存在しています。こうした外国の例も参考にしながら、日本でも、祖父母と孫の面会交流に関する法律の規定を設けるかどうかについて、議論をする必要があるのかもしれません。

- 法の舞台/舞台の法 - 2023年7月発刊 vol.190

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