シリーズ1
-文学に、アートに、少女に、そして竹に魅せられて-
【第2回】崩壊を経て、気づきへ
風邪をこじらせていたがそんな意識もなく、食事がのどを通らない以外はいつものように本を読み文章を書き過ごした。が、さらに悪化、診断は肺炎。ピクニック気分で入院準備をしてきた私が通された病室はすべてが白一色。その白を見て初めて病気を実感した。
まさに思考が停止した状態だった。思考停止しないと体が壊れるくらいの状態だったのだろう。その瞬間、体は空間に飛び散り、空間と世界が一体化したような強烈な感覚に陥った。
この体験を通して、これまでの善し悪しの判断は正しくなかったことに気づき、100%信頼してきた自分が全く頼りにならないとわかった私は、この先一体どうやって生きていったものかとただ深く苦しむしかなかった。
そんな状態を救ったのは、絵画教室のチラシ。「そういえば昔は絵を描いていたな」と、教室に通い始めることにした。上手下手関係なく、描いていくと作品が完成する手応えが嬉しく、ひたすら絵を描き続けた。
ロシア文学を学ぶ自分は暗い性格だと思っていたが、絵を描くと原色が飛び出す。おおらかな少年時代の原体験が甦り、太陽の光、海の青が自分の本質に存在していることに絵を通して気づくことができた。
こうして元気は取り戻してきたが、自分で判断することはもはや正しいとは思えず、判断しない、ということを決めた。誰かから誘われたら、「ハイ」といってまず感謝しよう。そうすれば、また新たな展開が見えてくるだろう、と思えるようになっていた。
「自分は一枚の葉っぱと変わらないのだから・・・」
自然の微々たる一部であるという意識は、今も変わることはない。
文学、芸術を経て最終的に選んだ道は・・・次回をお楽しみに!