人の心は3つに分けると理解しやすくなります。その3つとは、思考・感情・本音(魂)です。思考は脳の働き。感情は胸で感じます。本音は下丹田(女性は子宮)から湧き上がってきます。
思考は、ルールや常識、こうあるべき、○○してはいけない、という過去の経験によるプログラムです。以前も説明したように、問題があれば改善するというのも思考の働きです。
思考に続いて現れる「好き、嫌い、不安、喜び」などが、感情です。
そして、腹の底から湧き上がってくる思いが、本音です。たとえば、「お腹が空いたのでなにか食べたい」「疲れたから休みたい」といった体の欲求もそうですし、「本当はこうしたい。こんな自分でありたい」という魂の声でもあります。
本音の声を無視すると
心が苦しくて受診される方は、本音を無視している場合がほとんどです。体がきついのに、きちんとしなければいけない! と無理に仕事や家事、育児をしています。また本当は嫌で嫌でたまらないのに、学校に行かなければいけないと思いこんでいると、頭痛やめまいなど、体に症状が出たりします。長い間、本音の声を無視してきた人は、本当は自分がなにをしたいのかわからない、ということが多いです。自分のことを後回しにして、やらなければいけないことを優先してしまいます。やらなければいけないことが終わってから自分の好きなことをしようと思っていると、気がついたらもう一日が終わってしまっています。
思考(ルール)は、ほとんどの場合、母親との関わりで作られていきます。母親の機嫌が悪くならないように、母親を悲しませないように、いい子にしなくてはいけない。きちんとお片付けをしないといけない。迷惑をかけてはいけない……など。母親の愛情がほしくて、自分の本音を押し殺して、マイルールを作り上げます。ときどき、母親がいい加減すぎて、反面教師で「あんなふうになってはいけない」と思い、頑張ってきちんとしようと決めた人もいますが、本音を抑圧してルールに従うという意味では同じことです。そのルールを社会に出てももったままでいると、必要以上に人目が気になったり、嫌われないようにしないといけないと思ったりします。
上手に反抗期を過ごした人は、思春期の湧き上がってくるエネルギーで、一度作ったマイルールを破壊します。そして、友人や家族以外の大人たち(学校や塾の先生、部活のコーチなど)との関わりなかで、なりたい自分になるために、新しいルールを試行錯誤で作っていきます。
しかし、「お母さんが可哀想」だと思っている場合、反抗期の感情をぶつけると、「母親が壊れてしまうかも」「母親を悲しませてしまうかも」と思ってしっかりと反抗ができません。そうすると母親の価値観をもとに作ったマイルールを壊すことができないため、大人になっても窮屈なルールをもち続けます。母親の価値観は、母親を幸せにすることはできるかもしれませんが、「お母さんにとっての『いい子』」になるためのルールなのです。自分の本当にやりたいこと、本当はどんな自分でありたいかを知り、それを実現するためには邪魔になります。そのルールをもっていると、本音の自分を抑圧することになるのです。
本音が満たされないままだと、なにをしても心から幸せを感じることができません。つねに不安やイライラがつきまといます。
体の底から湧き上がってくる本音は、かすかな感覚としてしか気づくことができません。一方思考は、はっきりと言葉で訴えてくるので、つい本音の感覚を無視して思考(ルール)を優先してしまいます。うるさい思考をおとなしくさせるためには、ちょっとしたコツが必要です。(続く)