サトウキビの茎には節があって、±30度程度の自由度で、屈曲自在に成長の方向を軌道修正できます。これはヒマワリの花が太陽に向くのと同じ仕組みで、オーキシンという茎の成長を促進するホルモンが一方(ヒマワリの場合だと花の反対側)に集まって、そちら側の茎が優先的に成長し、反対側(花の手前側)の成長が遅れることで、自在に角度を変えることができます(花は太陽の方向を向きます)。
これは茎の長さが5メートルにも成長するサトウキビにとって、非常に大切な機能です。台風で横倒しになった後、また若葉を太陽に向けて伸ばしていけるのは、節の部分で茎の成長方向を再度上向きに軌道修正できるからです。筋肉の伸縮によって関節を曲げる動物のように、複雑な骨格構造を取らず、サトウキビは至ってシンプルに体の向きを変えていきます。
また、節の部分は新しい葉っぱ・芽・根を出す役目もあり、複雑・緻密な組織構造になっていて、一般の茎の部分より固くできています。だから台風の強風に煽られたときなど、通常は構造上、屈曲部に外力が集中して破壊の起点になりますが、サトウキビの場合は節の部分から折れることはありません。
一方で同じように5メートル程度に幹を大きく成長させるバナナにとって、地上部分に節を持たないことは持って生まれた厳しい運命のように思えます。実はバナナの茎は地下にあって、一度地上に出芽してからは軌道修正が効かず、一本鎗に伸びていくしかありません。たくさんの株が密植して根元部分に空きスペースがない場合には、隣り合うバナナの幹同士がせめぎ合った結果、外側に逃げて斜めに幹を伸ばしていき、成長の途中で自重を支えられなくなって折れてしまいます。
「最初から親株から大きく距離を離して出芽するように戦略を練らないと自滅するのになぁ……」(僕的には老婆心)などという気持ちは、バナナからすると余計なお世話なのでしょうね(苦笑)。