新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
まず思い出していただきたいのです。昨年の3月11日からの数日間に、今年のお正月をこのように迎えられることを想像されていたでしょうか。ほんとうにいろいろなことが押し寄せた昨年でしたが、多くの皆さんにとって当時、こうやって新しい年が迎えられることは、決して「あたりまえのこと」ではなかったはずです。改めて考えますと、あたりまえのように存在している全てのことは、実はまぎれもなく無限の可能性から火花のようにわき起こった奇跡の結晶そのものだといえます。本紙を目にされていることも含め、周りにいる人、あるもの全ては、決して抗えない無限の縁と不思議な組み合わせをもって、その場に存在しています。あらためて、この瞬間を迎えられたことに心からの感謝を捧げたいと思います。
日本人はずっと昔から、このような気持ちをもって「新年あけましておめでとうございます」と、新しい年の到来を心から祝い、全てのつながりに感謝して生きてきました。新しい「日」や「年」そのものの到来に、言祝(ことほ)ぎ慶ぶこの国の美しさをあらためて称えたいのです。一方で、私たちは便利で物質的に豊かな生活と引き替えに、いつのまにか「もっとも大切なこと」を脇におき、好まざる状況は誰か自分以外の他人や組織のせいであると思い込んで、とても大切なことを見失い始めました。確かに今は、良からぬ動機の人々が暗躍している時代であることは事実でしょう。しかしそれは、今も昔も変わっていません。すっかり変わってしまったのは、どこかの「誰か」や「何か」ではなく、私たちの心の方だったのかもしれません。社会のゆがみは是正されていくのが進化といえますから、確かに批判も大切なことでしょう。ここで改めて思い出したいのは、それよりも前に私たちが多くのことを人任せにしてしまい、あたりまえだと思っていた数々のことです。事故前に福島を訪れる機会のなかった私は、ことが起きてから彼の地のほんとうの美しさを知ることになりました。日本人の原風景ともいえる、里山のやさしさがあふれる福島の土地がまた安心の土地となるためには、多くの努力と時間を必要とします。黙して存在するすべてのものは、失われてはじめてその価値がいかほどのものであったのかを教えてくれます。あたりまえに存在しているものにこそ、絶えざる感謝に値する、計り知れない価値があったのです。批判や恐怖は前向きな再生をもたらしませんが、愛と感謝は認知と創造をもたらしてくれます。
同時に、被災された皆さまの心中を思うと、自らの無力と想像力の欠如を考えないときはありません。しかし、私はあえて希望と感謝をもって、この新年を迎えたすばらしさをともに慶び、起きてしまった悲しみには、よりよい未来と無限の可能性があることを信じたいと思います。あの震災を超えて生かされたことに改めて感謝し、残されたものがなし得るであろうことを愚直に追求することだけが、私たちに託された道だと考えています。いつのまにか私たちが忘れていた、たくさんのことを、2011年はもう一度思い出させてくれた年だったといえるでしょう。
今年、2012年が私たちに与える質問は「あなたは何を大切に生きていきますか?」ということではないだろうかと自問自答しています。それは2012年についてよく語られるように高次元や暦の話などではなく、目の前にあるすべてに無限のつながりを感じ、そこに一期一会の決意を持って生きられるかどうかが問われているような気がします。予言に一喜一憂するよりも、「今、この瞬間に何を大切にするか」を常に感じて生きてゆきたいものです。
すべての存在と縁に、無限の無限の感謝を込めて。
そして、『あけましてありがとうございます!』