シンプルに考える

 

秋の深まりとともに、何事も落ち着き、また心も体も、より深いところに潜っていこうとしているこの季節、本号のテーマを「深める」としてみました。

インターネットの広がりによって、私たちの情報収集はとても簡単になった一方で、フェイクニュースやマーケティングメッセージをはじめとした、裏づけのない情報に晒され、振り回され続ける私たちが、物事の本質を捉えるにはどうしたら良いのでしょうか。こんなことを考えてみたいと思います。

フェイク(偽)の意図

偽ニュースは、その発信者に明確な意図、つまり偽情報を一気に広めることによって何らかの利益または快楽を得るという目的があるため、とても巧妙に仕込まれています。つまり、その情報を出すことによって、反応するのは誰なのか?というターゲットの設定が明確におこなわれていますので、逆算して拡散しやすく、効果性の高い嘘を作り出すことが可能なのです。

フェイスブックやツイッターなどで、偽ニュースをシェアしている人はいつも同じ人、という経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。特定のコアビリーフ(核心的信念)を持ち、なにかそのことで、いつも怒りや憤りを抱えている人は、情報の真偽を確認することよりも先に、心と体が反応するため、「シェア」というボタンを押します。そして、シェアされた偽情報の脇には、「やっぱりそうだった」という趣旨の言葉が添えられています。

もっと怖いのは、拡散に関与する人は良心に基づいてそうしているので、何かまずいことに荷担したという気持ちは全くないということです。特に原発、軍事、金融、地震に関する情報は、裏のない話がたくさん流布されていて、読み手を不安に誘います。

私が日々気をつけていることは、お客様に間違った情報を提供することで、必要以上に不安になっていただかないようにすることです。ものやサービスを売るためのマーケティングの世界では、エモーショナルマーケティング、つまり相手の感情を恐怖や不安、混乱に陥れることでよりたくさんの利益を導く……というテクニックが駆使されています。特に健康産業ではこれが有効とされますので、使っているところも非常に多いのですが、弊社はこれらに与しないということを先に決めています。

偽ニュースで名をあげ、または一稼ぎする人もいる世界ですから、あまり倫理的になることは何でも抑制的な表現になってしまい、これが批判されることもあるのですが、これは仕方のないことだと思います。

フェイクが作られる理由はお金だけではありません。発信者、及びシェアした人の自己重要感を満たすという目的もあり、これがことを難しくしています。私にもこのような偽情報が各方面からたくさん届きますが、私はメディア関係者ではなく取材網もありませんので、事実を確認することは非常に難しいことです。おそらく本誌の読者のみなさまもほぼ同じ状況と考えたとき、大切なことは「誰が得するための情報か?≒お金の流れ」と「誰が誇らしい気持ちになるための情報か? ≒自己重要感の充足」を見極めることです。

人は生存の欲求が満たされた次の段階で、自分を価値あるものと認識したいという気持ちが生じる、という特性からして、後者は特に大切です。お金の匂いがないからといって、すべて真実というわけではなく、誰かを怖がらせる意図が感じられる情報は、何度も批判的に読み込むことが求められているような気がしてなりません。

シンプル イズ ベスト

私がもう一つ大切にしていることは、難しい事柄を、できるだけ簡単にお伝えすることです。とても抽象的で難しいと思われる事柄こそ、背景にあるのはとてもシンプルなのです。「戦争はなぜ起こるのか」という一点について考えてみましょう。「戦争によって、儲かる人がいるからだ」というのは一つの考察です。また私は「相手との違いを強調し、違っている相手を屈服させたいという気持ち」だと考えています。これが、死の商人に加勢するエネルギーとなります。

逆にいえば、「そもそも、違うのは当たり前で、何が違うのかよく相手について知りたい気持ち」があれば、もう戦いにはなりようがありません。戦争の根っこは私たちの心の中にあり、「違うのは許せない」という気持ちそのものです。

これが、食にまつわる違いをよく理解して、バリアフリーにしたいという気持ちでスタートした「Beyond “food barrier ” ! 」プロジェクトの中心的な目的でもあります。文化、習慣、宗教、思想、信条、志向(好き嫌い)まで含めた食の違いは、どれが正しい、どれが間違っているという視座に立てば、大きな意味で戦争の根を張ることになる一方で、違っていることをよく知ろう、優劣はつけないでおこうという気持ちでいけば、それは平和な社会実現への具体的なアプローチの方法となり得ます。

自然食の世界では、どれが正しく、どれが間違っているという主張がなされがちですが、私はここから明確に距離をおき、違いにフォーカスして、よく学び、よく観察して深めてゆきたいと考えています。自国の文化を優劣で語りがちな今こそ、世界は深い考察を必要としているという実感があるからです。

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プレマ株式会社 代表取締役
中川信男(なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。
保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。