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インタビュー取材しました。

【Vol.90】セミナーレポート 仏画で観じる、心の対話 第2回 龍を描く

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仏画師・安井妙洋さんによる第二回仏画セミナーが開催されました。今回は参加者が実際に仏画「龍」を描きました。仏画や龍についてのお話からはじまった会の一部をご報告いたします。※昨年12月7日にプレマ東京支社(六本木)にて行われたものです。

「写仏」なら誰でも描ける

「描くものについて知っておくと、絵に向かう姿勢が違ってきます。仏画は見るのと実際に描いてみるのとでは、印象がまったく違うものですよ」と安井先生。

 仏画は、基本的に仏教の教典をもとに描くものです。日本の仏教は中国の道鏡の世界がかなり深く入ってきているので、八卦の世界……つまり陰陽の世界を理解していないと、仏画は描けません。
 本格的な仏画には厳しい決まり事があり、描く図や色も決められています。かなりの時間をかけて勉強する必要がありますが、私も京都に住む師匠のところへ20年間通いました。仏画を正しく描くなら、それなりの鍛錬が必要なのです。
 その点、仏画のなかでも「写仏」という絵を写す方法なら、誰にでも簡単に描くことができ、心の安らぎも得られます。しかし簡単とはいっても、「写仏」も「気」によって描くものですから、仏画の先生から話を聞いたり、あるいは資料を読んだりして内容を少しでも理解しながら描いていくことが大切だと思います。

龍の起源は中国の黄河文化
 今日のテーマは「龍」を描くということですが、実践に入る前に、まずは龍について知っておいていただきたいと思います。
 仏画は、浄土教絵画と密教絵画とふたつにわかれますが、龍は基本的には密教からきています。浄土教ではあまり龍は描きませんが、密教において龍はとても大事な存在です。
 龍の起源は中国といわれています。中国には黄河流域の北方文化圏と、長江流域の南方文化圏があります。
 北方文化圏には龍を神として崇拝していた龍神文化があり、その支配者は「黄帝(こうてい)」でした。一方、南方文化圏では太陽神の文化があり、その支配者は「炎帝(えんてい)」といいました。
 その黄帝と炎帝が戦った結果、黄帝が打ち勝ちましたが、そこで龍神が中国で一番オーソドックスな文化となり、今日に至っているわけです。

龍と鯉は陰陽の一対

「龍」の下絵。その下は「転法輪」です。「お寺の入り口にはよく転法輪がありますが、これは仏様を現すもので、私たちの身を守ってくれるものです」(安井先生)

 そして、龍のお話をするときには、鯉は欠かせません。一見、「なぜ?」と思われるかもしれませんが、おもしろいことに龍と鯉は、つながりが深いのです。
 龍の鱗は、81枚あるとされています。陰陽五行からいうと、奇数は陽で、偶数が陰の数字です。前回の「かえるの話」でもお伝えしましたが、3は陽数で上位とされ、「参加する」「賛同する」などともいって、物がたくさん集まってくるとてもいい数字です。その3をかけあわせた数字が9(3 ×3=9)で、陽数でももっとも尊い数とされ、さらに81は、9をかけあわせた数字(9×9=81)で、最高の数字になるわけです。
 一方、鯉には36枚の鱗があるといわれています。これは「6 ×6=36」です。つまり36は陰の数字を掛け合わせた数字ということで「六陰」という、陰の代表的な数になります。
 龍も鯉も鱗をもっているためにともに魚の部類とされ、龍は81で陽の代表、鯉は36で陰の代表とされ、つまり陰陽の一対ととらえられ、深くつながっていると考えられていました。
 また、鯉は黄河上流にある龍門という急流を登りきれば、龍になれたという言い伝えがあります。「登龍門」という言葉は、この言い伝えからきていますが、ある条件を満たせば、陰が陽に達することができると考えられたのです。

龍の形は、様々な動物の寄せ集め

「絵は立てて見ると違って見えるので、まず下絵を立てて眺めてみて、ここからスタートしようとか、このへんは強く描こうなどとイメージしてみるといいでしょう」(安井先生)

 また、龍は馬とも関係しています。龍と馬を合わせた「龍馬」という水中の神様がいたということですが、この龍馬の伝説は中国北部に集中しています。龍馬はあごが特に長い馬で、体に鱗のある水中の生き物であり、2 本の角をもっていて、さらに翼があったということです。今日の龍の姿は、ここからきているとも考えられています。龍の本質は、天上を飛行する馬という形ということですね。また、龍の姿は、「9」という尊い数字の数だけ動物が寄り集まってできたとも考えられています。北方民族の人たちの身近にいた動物……鹿やウサギ、蛇、鯉、鷹、牛、らくだ……などの一部の形をとって寄せ集めた姿ということです。
 そして龍は必ず「宝珠」を持っています。これは、仏教でいう「如意宝珠」のようなもので、これを持っていれば願ったものは必ず手に入るとされています。宝珠を口に含めば、たとえ死んでも復活できるともいわれています。龍はこの玉がないと1日も生きていられないということで、龍にとってはとても大事なものです。

仏画は「気」の集合体

下絵の上に和紙をのせ、上から筆でなぞっていきます。筆は垂直に持ち、穂に墨はたっぷりつけて線がかすれないようにします。実際に描いてみると、かなり集中力がいります。

さて、龍について色々とお話をしましたが、龍の絵を描くときには、お話したようなことを想像しながら描いてみてください。たとえば、「宝珠」のお話が心に残れば、「宝珠を力強く描いてみよう」と思われるかもしれませんし、「龍馬」のあごはこうなっているのかとか、鱗は鯉からきているのかとか、想像しながら描かれるといいと思います。
 仏画は基本的に、ひとつの「塊」として見ます。一つひとつの線がすべてつながっているものと思ってください。
 仏画で大事なのは、「気」です。慌てずに、きちんと丁寧に描くことが大事です。筆の穂先の長い毛のことを「命毛」といいますが、この命毛に自分の「気」を通して、言うに言われぬ思いをグーッと入れ、勢いを大切にします。うまく描こうとはしないで、硬くもなく、ゆるくもなく、適度にやわらかいイメージで描きます。慣れてくれば、丹田に力を入れ、「気」を入れて描く感じがつかめてくると思いますが、はじめは、しっかり気持ちを整えて描くことを意識してみてください。
 描き上げた龍は密教系のお寺に持っていき、御朱印をいただいてもいいと思います。龍は不動明王ともつながりがあるので、不動明王をおまつりしたお寺でもいいかもしれません。精魂込めて描いた絵はそのまま飾ってもいいと思いますが、御朱印をいただくと、一段といい絵に感じられると思います。ぜひそうして楽しんで飾っていただきたいと思います。

文:らくなちゅらる通信編集部

講師:安井 妙洋(やすい みょうよう)
仏画師。1984 年より真鍋俊照氏に仏画の基礎・理論を学ぶ。東北大震災後は東北の人々に仏画を描く援助を始める。
仏画教室での活動とともに、北インド・ラダック地域の支援活動も精力的に行っている。

- 特集 - 2015年3月発刊 Vol.90

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